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溺れる市民 (河出文庫)

価格: ¥567
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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酒場の与太話 ★★★☆☆
 この頃どうも島田雅彦元気がないと思いません?朝日新聞の土曜版連載とか読んでも「疲れてる?」って印象で。無限カノンが期待通りの評価じゃなかったからかな。でも無限カノンには、すごいことやってやる! という勢いが感じられたけど、この短編集は、どこがどうってわけじゃないけど、元気がない。酒場の与太話を、語り手が二枚目だから、ついトイレ我慢して聞いちゃう、みたいな。しいて言えば「決闘」で、どこの地方都市にもいるようなぱっとしない同級生同士がいがみあい、決闘する(設定はリアルだけど、そもそもこういう奴らって決闘とかしないで30になっても40になってもいがみあってるよね、直接カオ合わせることなしに、噂話のレベルで) 場面の舞台となっている、眠りが丘近くの“宅地造成中の高台”は、恐らく「美しい魂」でカヲルと不二子が不滅の愛を誓う最後の邂逅の舞台と同じ場所。だから、間抜けな事故死を通りがかりの老人が“男同士の心中”と思い込むのは、心中を選ばずエトロフと皇居に別れていったカヲルと不二子へのオマージュで……みたいな読み方をすると、それなりに楽しいかな。ま、それも酒場の蘊蓄みたいですけど。
 
スキャンダラスは基本でしょ ★★★☆☆
力抜きすぎでは?島田雅彦って数年毎に文体変えるらしいんですけど、昔の文体の方が良かったなぁ(島田作品の中では「忘れられた帝国」が一番好き)、って思う私の感想ですが。この前の無限カノン三部作もかーなーりー読みやすい文体になっちゃってたけど、「溺れる市民」はあれより読みやすい。今までとは違う読者層も意識しているんでしょうか。

島田雅彦特有の悪趣味というか毒気みたいなのは健在。でも「スキャンダラス」は誇大広告(これで島田作品に入門する人にはそうかもしれませんが)。だってスキャンダラスは島田雅彦の基本でしょ? それをわざわざ帯に書かれちゃぁ、いつもよりヤバいことが書いてあんのかと期待しちゃうじゃないすか。はっきり言って、以前の焼きまわしみたいなのが多かったことにはがっかり。

でも、やっぱり島田ファンなので、「夢のレコード」という短編にはわりとときめきました。おもいっきり幻想テイストが気持ちいい! 「オナニスト」なんかはもう独擅場ですね。はじめに力抜きすぎってかいたけど、濃厚に漂う読者をおちょくってるよーな余裕ぶりは素敵でした(ただし最後の作品だけはちょっとまじめ=初期っぽい)。
そういう意味で、初級、中級、上級っていう風にわざわざ分けられてるのは古くからのファンサーヴィスなのかも。