初心者にとって、通読しても、必要な部分だけ参照しても使える「ネタ帳」
★★★★☆
著者は民生用デジタルカメラが登場したころから使い続けているというデジタルカメラのベテランで、現在もいくつかのネット媒体にデジカメ撮影に関する連載を持っています。
その著者がデジカメでの撮影法について著したのがこの本なのですが、「いい写真のためなら、機材も時間も惜しまない!」という写真ではなく、「素人が何かの折にチョコッと撮る写真を、少しの工夫でぐっと良いものにしよう」というようなコンセプトで書かれていますから、普段の撮影にすぐに生かすことができます。使用するカメラも、デジタル一眼レフよりもコンパクトデジカメの使い方に主眼が置かれているように思います。
大抵の項目は見開き2ページで、「ペット」「カフェのランチ」「旅先の風景」といったように細かいテーマごとに分かれています。だから、何か撮りたいという時に、そのページをさっと読めば一通りのコツがつかめます。それぞれのページには作例が多く、文章は少ししかありませんから、すぐに読んでしまえます(出版社のサイトに何ページか見本があります。)。一方で、何を撮るという目的がないときにその他のページも通読すれば、体系的な知識がつかめることでしょう。
この本で語っているのは、「EV値の調整」「ホワイトバランス」「フラッシュのオフ」「シャッタースピードの調整」といった、基礎的な事項です。どれも、カメラの説明書に載ってはいますが、具体的に「こういうシチュエーションではこう設定する」というのが示されているのが、本書のありがたいところです。
きっと、前の段落で書いたような項目については既に熟知しているという方、一眼レフをばりばりに使いこなしているという方などには、本書は物足りなく感じることでしょう。しかし、これまで『写ルンです』くらいしか使ったことがなかったところからデジカメに乗り換えて、設定のしかたがよく分からない、という私のような人間にとっては、この本の通りに撮影すれば、これまでよりぐっと見違える写真が撮れるようになって、写真撮影が楽しくなることと思います。