十数年を経て再び出会えた「不思議」
★★★★☆
1992年12月に刊行された『三好さんとこの日曜日』の続刊が
まさか17年を経て出版されるとは思ってもみなかった。
当時、川本三郎氏が絶賛している記事を新聞で読んで購入したが、
一読して、その不思議な世界観の虜になった。
中央線沿線、西荻窪あたりのアパートに暮らす
若い夫婦と猫1匹の静かな日常を描いた作品だが、
掌編が連なった作品群が織り成す世界は、実は結構「非日常」で
1話読み終えるごとに、巧妙な手品でも見せられたかのような
不思議な感覚がいつまでも残った。
著者の他の作品も読みたいと思ったが、
寡作家とのことで、他の作家との共作が何冊か出たものの、
『三好さんとこ・・・』のような楽しさを味わうことのできないまま
十数年がたってしまった。
今回の単行本は、
当時描かれた作品で、単行本に収録されなかったものがまとめられたそうで、
陽の目を見たということに、著者自身も驚いたらしい。
当然、昔読んだ前作と同じ世界観が続いているが、
前作に掲載された作品よりも、さらに不思議さが増しているようで
それが単行本化の際に選から漏れた理由なのかもしれない。
十数年を経て、再び「三好ワールド」に触れることのできたのが嬉しい。
前作を読んだ当時のことも思い出されて、タイムカプセルのようだ。