本書は会社法判例百選（2006/4刊）と合わせて利用することが最も有用と考えます。

特に会社法はこの百選がよくできているため、本書の必要性はそこまで高いとは
言えないかも知れません。しかし、本シリーズの特徴である
「パッと見のわかりやすさ」は健在と言えます。

こんなことを書くのは、百選シリーズがよくいえば学問的に書かれていて
（編集方針がそうなのでしょうが）、全体を読んでみてからでないと、
その判例の問題点と結論、意義がわかりにくい場合が多いことによります。

その点、本書はこれらが色つきでどうやっても見落としようがないように
書かれており、初学者にとって非常に頼りになります。

肝心の内容ですが、判例や（当たり前ですが）通説ベースですし、
ほとんどはスタンダードとされる基本書や調査官解説など一流の文献からの
引用がなされているため、信頼して読める点も非常にありがたいことです。

逆に、問題点としてはどうしても登載判例に穴のあることでしょうか。
本書に登載の会社法判例は、百選・重要判例を含めて86件であり
この厚さでも百選判例は網羅し切れていませんし、百選刊行後の重要判例にしても、
もう少し数があればと感じてしまいます。
この点について一層網羅性が高まることを期待して、星をひとつ減らさせてもらいました。

タイトルにも書きましたが、これを読めば百選はいらないというわけではなく、
これと百選を合わせることでより厚みのある理解ができるようになると思います。

無事に届きました。