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新・反グローバリズム――金融資本主義を超えて (岩波現代文庫)

価格: ¥1,029
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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セイフティネットに関する考察は興味深い ★★★★☆
グローバリズムによって引き起こされる、マネーの暴走や
労働環境の悪化などの諸問題に対しどのように対処していく
のかを、従来の感情的なアンチグローバリズムの視点を超えて
具体的な処方箋を提示して見せる興味深い一冊。

本書では、グローバリズムを、膨れ上がったドルが世界中に
引き起こすバブルの連鎖に対する、アメリカの自己正当化に
他ならないと看過しつつも、それにナショナリズムの見地から
感情的に対抗するのは、ただの気休めにしかならない、と
一蹴した上で、グローバル化した世界は前提としつつ、どう
グローバル化の弊害を取り除いていくか、が解説されていく。

具体的には、現在国家単位で構成されることで機能不全に
陥っているセイフティネットを、金融の面からはより広域な
レベルに社会保障の面からはより地域的なレベルに、という
二重の張り替えを行うことによって、社会の持続性を
担保していこうというものだ。昨今盛んに争点となる国家と
社会保障のありかたについて、ありがちな国家のパターナリズムを
排し、国家の枠組み自体を問う巨視的観点に基づいたこの提言は
非常に興味深いし、現実的に議論されるに値すると思う。

もっとも、これと併行して、疲弊した世界経済を立て直すために
グリーン革命(グリーンバブルを起こせ、とまで言っている)が
必要というのはどうなのだろう。

環境・経済問題の一挙両得の課題解決を図る、というのは分かるが
オバマの“グリーンニューディール”のような、政治家の
スローガンと同等のものとしてしか感じられない。そもそも
バブル循環が世界を荒廃させたのならどうして今回ばかりは
違うと言い切れようか。

この部分は眉に唾して読まざるをえなかった。

現代に対して一つの視点を得る、という意味で大変有益な本書。
その提言は多くの人の間で議論されてしかるべきものだと思うが
岩波現代文庫という、少々地味な版元であることが残念でもある。
過渡期感を常に持つべきということ ★★★★★
 本書を読みながら 頻りと「過渡期」という言葉を想った。

 僕らは所与の「環境」に関して、それは昔から在り、今後も続くと考えがちだ。いや、希望しがちだという方が正確かもしれない。例えば 日本は経済大国で恵まれた国だという一般論があったとして、その状態は昔から在り、今後もそうであろうと考えるようなことだ。

 歴史を考えるだけでも、少なくとも「昔から在り」という部分は間違っていることは直ぐ分かる。1945年8月の日本が「経済大国で恵まれた国」では最早無かった。
 同様に 「今後もそうであろう」という漠然とした期待感にも根拠が有るのか。僕らは ゆで蛙のように、じわじわとした危機の中でも、それに気が付かないという感性の鈍さだけで、そう楽観しているのではないか。


 つまり昔も、今も、そしておそらく未来永劫も あらゆる瞬間は「過渡期」だ。


 「過渡期」に、僕らはどうしたら良いのかということが、本書の底辺を流れる主張であると僕は読んだ。
「既」という言葉が本書で目に付いた。「既」には「米国」「新自由主義」「覇権」という意味もあれば「ナショナリズム」「計画経済」という意味も含ませてある。将来を考えるに当たって、「既」からどれだけ自由に考えることが出来るのかということが 果てしなく続く「過渡期」をしたたかに生き延びる知恵だという事が著者のアジテーションだ。著者の守備範囲の広い各種提言の底流には、そのアジテーションが響いている。


 「諸行無常」という言葉がある。昔から東洋には「過渡期感」というものがあった。今一番求められているのは、「過渡期」を耐え抜き、新しい人間の在り方を示す新しい「思想」だ。「過渡期感」を既にDNAに取り込んでいる日本人が、かような思想を構築出来る可能性は十分にあるべきだ
著者の論は常に一貫している。本書は「旧版復古」ではなく、もはや新書である。 ★★★★★
本書は1999年に出版された『反グローバリズム』著者同,岩波書店 のただの文庫版ではない。本書では著者が一貫して主張してきた不毛な二項対立−東西冷戦型社会システム,市場か政府か,新古典派経済学かケインズ主義か−がいかに世界経済を後退させてきたか、そしてそれによって基軸通貨国アメリカが金融自由化を世界中に強制するといった金融資本主義による負のバブル循環を引き起こし、世界中の人々の「生きる権利」を「はく奪」してきたことを、詳細かつ具体的に、(1999年当時と比較して)大幅加筆しつつ説明している。もはや旧版の文庫本復古とはいえない。これは新書である。
 加えて、これらの古い社会システムを超えた「第3の道」−すなわち社会保障基金政府、地方政府、中央政府による地方分権化、そしてケインズは唱えた世界通貨論のような、セーフティネットを上方に張り替えるといった非現実的な方法を逆手にとって、セーフティネットを下へ下へと張り替え、それを市場と地縁共同体の中にはめ込み、大きな政府に頼らない「真の公共空間」を作り出すという、大いなる方法論を提示している。
 具体的には本書だけではこれらの構想を把握することは困難であり、神野直彦氏の著作や井出英策氏らの財政改革案も通読する必要があるだろう。
 旧版『反グローバリズム』は中国でも翻訳版が出版されている。本書もまた中国のみならず、世界各国で翻訳版が出されることを期待する。
 また竹森俊平氏の『資本主義は嫌いですか』にはバブル循環に対する解答が用意されていなかっただけに、竹森氏の著書の読者には本書を一読する意義があるように思われる。

 最後に、本書に提示されている方法論を政府・経済政策の関係者諸兄が参考されることを強く望む。
旧版からの理論的「深化」がほぼゼロで、とても残念 ★★☆☆☆
旧版(反グローバリズム)の出版から10年。「グローバリズム」について理論的な批判を行い、「セーフティネット」をいち早く提唱してきた著者の功績には一目置くものがある。しかしながら、この旧版から今回の「新・反グローバリズム」にかけて、残念ながら理論的な進化は全く無かった。
アメリカは基軸通貨国であることを利用し、ドルを野放図にばら撒き、バブルを多発させ、世界経済を滅茶苦茶にしている。これがグローバリズムの実態だ。だから、これに対抗する枠組みをリージョナル、ローカルレベルで構築しないといけない・・・金子氏の意見は旧版の時と同様、これに尽きる。旧版から加筆された部分の多くは、アメリカで起こったリーマンショック、そしてそれの対応としての不良債権処理(経営責任をうやむやにしたままの「ずるずる処理」)の批判となっており、タイトルに「新」と銘打った割には、進化が無さ過ぎるのではないだろうか。
現実の世界経済を見れば、依然として金融危機のリスクが残存しているものの、中国を初めとする新興国の好調により、世界経済の二番底は回避されている。また、世界経済は中国等の台頭により10年前に比べて一層多極化している。金子氏はもう少し、こうした世界経済の側面も踏まえたうえで、アメリカ批判一辺倒ではない「世界経済への処方箋」の提示を行うべきではないだろうか。
また、金子氏は市場に公的空間を埋め込むとして、社会的企業家やワーカーズコレクティブなどを賞賛する。確かに、こうした要素は市場における個人の「防御網」にもなり得るものだろうが、近年は社会的企業家などについてたくさんの著作が出ており、こうした先行研究を踏まえての理論の深化が可能だったはずなのに、そうしたものを目指した形跡が皆無である。
新書での出版ということで、スペース上の制約が多分にあったのが理由かも知れないが、旧版からの理論的深化が不十分で、読後には消化不良感が残った。旧版をお持ちの方は買う必要が無い、と言ってしまっては言いすぎだろうか。