剣をペンに変えて描く藤沢ワールド
★★★★★
徳川綱吉と吉宗の間に位置する時代、綱吉の次の将軍として甲府藩主から家宣が選ばれる。甲府藩の儒者であった新井白石は甲府藩の家老間部詮房とともに江戸へ上り政治改革を進めてゆく。
現代においてその政治改革に賛否両論ある新井白石を、甲府藩時代から家宣、家綱に至るまでを描く、政治を中心とした作品。
将軍家お抱えの林家との軋轢、勘定奉行萩原重秀の罷免、家綱の継嗣問題といった政治的に非常に敏感な問題を白石の鋭敏な頭脳が裁いてゆく。
単に剣をペンに変えて語るといったものではなく、政治をめぐる駆け引きや対立する側の対面といった細かい描写を論理的に解決していく姿に非常に憧れをも感じる。
また一方で著者自身の深い分析も端々に入っていて、非常に頭を使うのだが、読みやすいので楽しんでこの時代の政治を理解できる面白い一冊。