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北朝鮮へのエクソダス―「帰国事業」の影をたどる

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: 朝日新聞社
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帰国事業会の思惑 ★★★☆☆
資料を読み込み、政府による帰国事業について書かれた本です。

朝鮮総連による学校も医療費も無料という宣伝があったということもあります。
この点では現在のキューバも医療費無料をうたってはいますが。政府が帰国運動を推進し
帰国協力会をつくったということもあります。北朝鮮としても無料の労働力確保のため
人手が必要であったという事情も伺えます。
特に当時、帰国協力会の会長、鳩山一郎さんに大きな責任があることがわかりました。
憶測や言いっ放しではなく ★★★★☆
北朝鮮への帰国運動が決して在日朝鮮人の自発的な行為でなかったことは巷間言われている通りであり、今更疑問を挟む人も少ないだろう。

しかし、時の経過とともに開示されることとなった数々の資料を基に、

1. 治安や財政面の理由から在日朝鮮人を排除したい日本政府の思惑
2. 国際的プロパガンダとして利用したい北朝鮮
3. 人道主義の美名の下に関わるもコントロールを失う国際赤十字

という図式を丁寧に解いてくのは、さすがに学者の仕事と言えるでしょう。

何の根拠も示さない憶測や単なる言いっ放しがまかり通る日本のジャーナリズム、ノンフィクション作品とは一線を画すものです。

帰国した在日朝鮮人の悲惨な運命について日本政府や赤十字に直接的な責任を問うべきものではありませんが、少なくとも帰国事業後期/末期においては、帰国者がどのような扱いを受けたか気づいていたはずであり、それでもなお国外への送り出しを推進したという点についてはあまり褒められたものではないでしょう。(ここから先は「北朝鮮『偉大な愛』の幻」(ブラッドレー・マーティン)などの北朝鮮研究本によるべきかと。)
国家間の思惑とイデオロギーに翻弄された人達 ★★★★☆
1960年前後、9万人を越える在日朝鮮人(日本人を含む)の方が北朝鮮へ渡り、その後苦難の道を歩むに到った過程を、当時の日本、北朝鮮、韓国の国際関係、及び赤十字の関与を含めて綿密に考証した本。

1952年のサンフランスコ講和条約(これ以前に朝鮮戦争があった)によって日本は独立するが、これにより在日朝鮮人の方は国籍を失う。これが第一の悲劇であり、在日朝鮮人の方は祖国を選ぶ必要に迫られた。日本では生活上の様々な権利(福祉,年金,雇用など)を失ったからである。当時の在日朝鮮人社会では、韓国派・北朝鮮派に二分されていたが、打倒資本主義を叫び、日本の共産主義者と手を組んだ北朝鮮派が優勢だったようだ。そこへ、突然日本赤十字が動き出し(後には国際赤十字も)、平壌に北朝鮮への帰還を働きかける。この動きが私には今一つ理解できず、人道的な動きだったのかどうか良く分からない。結果として第二の悲劇となった。平壌とのパイプができてしまったからである。北朝鮮派は赤十字に訴える形で帰還を目指そうとし、韓国は当然それに反発する。北朝鮮への帰還を認める方向にあった日本政府と韓国は一触即発の危機にあったと言う。この時、「北の楽園」をPRする金日成の尻馬に乗って、北朝鮮への帰還を後押しした旧社会党や共産党の罪は重いだろう。毛沢東の"大躍進運動"によって、北朝鮮に残っていた中国人30万人が帰国し、北朝鮮側は穴埋めの人間が欲しいという事情もあった。こうした中、日本と北の赤十字が合意し、輸送手段などを含めた帰還が決定されてしまうのである。北朝鮮帰還者の幻滅とその後の苦難の道は周知の通りである。

本書を読むと、北朝鮮帰還者が単に甘い言葉に誘われた訳ではなく、国家間の思惑やイデオロギーの犠牲者だと思えてくるのである。
大きな物語と小さな物語の交錯 ★★★★★
1959年12月より始まった在日朝鮮人の「帰国事業」。一体彼らはなぜ北朝鮮へ渡ったのか?そこには、冷戦下の様々なアクターの思惑があった。

経済的負担であり、また治安上の「脅威」として認識されていた在日朝鮮人の一掃を図る日本政府。経済発展の為に労働力を欲し、かつ外交・安全保障戦略の上で日本とのつながりを開き、同時に日韓国交正常化交渉を妨害したい北朝鮮。安保条約を最優先し、岸政権の帰国事業に暗黙の支援を与えた米国。帰国事業を平和共存という潮流の中で推し進めることで世界の中で影響力を確立したいソ連。著者による「帰国の旅の跡」をたどっていく本書によって、読書はまさに冷戦の一側面を目の当たりにすることになる。

P28「個人の人生についてのささやかな物語と、世界政治の壮大な物語とが交錯したとき、いったいどういうことが起こるのか?」
P29「大きな歴史と小さな歴史が交錯し、作用しあう点を発見すれば、その関係を多少なりとも理解するための、人間的洞察が得られるかもしれない。」
P255「共存は別の種類の暴力を覆い隠すこともした・・・。力の均衡を保つために、両サイドの力あるものが陰で手を組み、事実上のパートナーとなって、力のない者の権利を踏みにじった。」
P255「北朝鮮への帰国は、究極的には冷戦の分断線をまたぐ暗黙のパートナーシップによる創作だった。」

特に感銘を受けたのは著者の歴史の叙述の仕方である。国家間の権力政治を描くのみで「人の顔の見えない」単なる国際政治史に陥ることなく、かといって人々の悲劇を具体的に描写するだけで考察を大きな物語の中で展開しない単なるルポに陥るわけでもない。国際政治の激動に飲み込まれ、翻弄される人々の声を汲み取りつつ、冷戦という大きな物語を描き出す著者の叙述には、同じく歴史を専攻するものとして、深く感じ入るものがある。歴史書としてジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』と並ぶ名著だといえよう。
赤十字とその他 ★☆☆☆☆
 日本では赤十字と日本共産党のつながりが昔からよく知られている。それは現在の輸血参加者の減少にまでつながっている。
 だが遠くの昔に常識であったことを著者は意図的にか無視している。無論共産党はその後、総連と民団を
バックアップし、帰国を促し、扱いきれなくなると切り捨てたのだが。
 その点でいえば国際的な資料を読み解き日本国内の資料に関してはほとんどふれなかったといってよい。

 著者が記述に残さなくても「記憶」は生き続けるのである。
 新たなる歴史修正主義の誕生といえるであろうか。