今も同じ悩みを・・・。
★★★★☆
少数民族であった満州族が明朝を退けてからの清朝270年の歴史を、東アジアや欧米列強との確執などのエピソードも多く取り入れた詳細な資料に拠って書かれている
清朝が辛亥革命によって崩壊するまで抱えていた沿岸部と内陸部との経済的格差や民族問題などは、驚異的な経済発展をしている現代中国においても同じ悩みを抱えている。
歴史は、繰り返すと言う諺もあるが、世界第二位(国民一人当たりのGDPを考慮しなくてはならないと思うが・・。)、の経済大国になったとはいえ、このような大きな悩みを抱えてる中国という一党独裁体制国家が大国主義(中華思想)を拭い去れないまま、今後、世界とどのように関わってゆくのだろうかとの不安を覚えながら本署を読み終わった。
清朝と近代世界
★★★★☆
岩波新書の「シリーズ中国近現代史」の初刊。20世紀中国の一連の革命はその正統性を主張するために前政権である清朝の時代を停滞・衰退の時代として規定した。19世紀の清はアヘン戦争以後、西洋列強の侵略の前に成すすべもなく、ずるずると衰退していったという見方である。本書で著者はそのような史観に抗し、清は様々な内外の危機を乗り越え、1870年代から80年代には政治的安定を達成し、アジアの国際対立についても積極的に対処し、列強とも渡り合っていた姿を描き出している。清を近代世界に適応させようとする勢力と、国内の社会秩序の動揺に儒教的秩序を再編・強化して対処しようとする勢力。二つの勢力の微妙な均衡の上に政治的安定が築かれていく様が興味深い。
推奨
★★★★☆
教養としての中国史に関心を持つ社会人および学生待望の一冊である。優れた歴史家は、例外なく名文家かつ秀抜なストーリーテラーであるが、本書の著者吉澤誠一郎氏もそのおひとりらしい。学生の日本語作文力アップの教科書としても歴史家の著作がまず思い浮かぶ。本書も、小品ながら、6巻シリーズの第一冊にふさわしい名著である。
伝統的華夷秩序から近代国際体系へ
★★★★☆
先ごろ同じ岩波新書から日本近現代史シリーズが完結し、一定の評価を得たといってよいと思われるが、矢継ぎ早に次のシリーズが登場した。今度は中国近現代史がテーマということだ。
本書は清朝が徐々に近代化していく経緯が必要かつ十分に論じられる。ツングース系の非農耕定住民族によって建てられた清朝は伝統的な華夷秩序と多様な民族文化世界を包摂していた。その最盛期を過ぎ、西洋主導の世界システムに組み込まれ、解体されていくさまが要領よく示されている。
オーソドックスではあるが、近年の研究成果をとりいれ、世界史叢書等にひけをとらない内容であり、新書としての価値は高い。伝統的な国民主権国家に解体されたために起きた様々な軋轢が、朝鮮半島や台湾との分断、チベット問題、尖閣諸島問題となってまもくすぶっているのである。これらの問題を考える歴史的背景を提供する。
政治的にはまったく中立な立場であることも付け加えておく。
清朝末期の諸相―その衰退と豊穣
★★★★★
本書は、中国近代史を専門とし、
現在は東京大学准教授である著者が、
清朝がどのように近代を迎えたのかを論じる著作です。
筆者はまず、広範かつ多様な人民・地域を統治した清のシステムを紹介したうえで、
それが相次ぐ農民反乱や西欧進出によって、変容していく様子を描きます。
また、海外に移住した華人たちのたくましい姿や、
飢饉や社会問題とそれに対処すべく結成された結社など
清朝末期を生きる民衆の姿も紹介します。
外交上の複雑な懸案となった謁見の儀式
まるで明治の東京を思い起こさせる上海の様子
そして東南アジア各国と交渉に当たった鄭観応など、
興味深い記述が多いのですが、とりわけ印象的なのは、
字が書かれた紙を大切に扱うことを主張する社会運動「惜字」です
清朝の衰退とその原因をコンパクトに描いたの本書
中国史に興味がある方に限らず、多くの方にオススメしたい著作です。