医師である著者は、以下の方法で統合失調症患者の治療の効果を挙げるか、治療を改善した。
　病名を告知した約20人の患者（入院させる事が多い）を集め、日本で開発されたアリピプラゾール（第三世代の治療薬で、患者を賦活する）を患者に投与しながら、他の同病の患者達が同病である事を宣言し、仲間と体験（幻聴、妄想、自閉、暴力など）への対処法を話合っているビデオを観てもらい、その後、感想や意見を話してもらう。そうすると、参加している患者達は病識を獲得し、医療に身を委ねる。この治療法には、患者心理教育の六つのプログラムがあり、治療には、親、主治医、看護師、精神科ソーシャルワーカー、作業療法士、音楽療法士も参加する。患者の家族同士も集まり、家族教育をエンドレスに受け、家族の心理教育を受ける。急性期の患者入院治療のツールとしては、クライアントパス（患者の自己評価）がある。

　統合失調症の子供を持つ多数の親達は、日本における医療システムの不備故に、子供の病気に辛酸を嘗めて来た（患者の自殺率は高い）。本書はこれらの親達に大きな希望と勇気を与えてくれる。治療に携わる医師達にも参考になるのではなかろうか。なお、米国内の治療例にも本書で触れて欲しかった。