ドヴォルザークの抒情、シューマンの情熱
★★★★★
ドヴォルザークのピアノ五重奏曲イ長調は第2、第3楽章にドゥムカとフリアントのふたつの民族舞踏を取り入れた意欲作だが、ここではピアノ・パートにボヘミア系のピアニストで、室内楽のエキスパートでもあるブフビンダーを迎えているのは偶然ではないだろう。またアルバン・ベルク特有の繊細でクールな表現は独特の透明感を醸し出して、リリックで流れるようなメロディー・ラインにブフビンダーが息の合った緻密なアンサンブルを聴かせてくれる。1993年ウィーン・コンツェルトハウスでのライヴ録音。
一方2曲目はシューマンの解放的で溌剌とした曲想を充分に活かした表現が聴き所だ。録音状態は前曲に比べるとやや劣るが、フィリップ・アントルモンの華やかで潤いのあるピアノと、弦楽の豪快なダイナミズムがよく調和している。特に終楽章の歓喜に満ちたフーガの再現は、生き生きとしてこの曲の最後を締めくくるのに相応しい。1985年、ニューヨークのカーネギーホールでのライヴ。
両曲とも演奏される機会が少なく、従って録音自体もそれほど多くない隠れた名曲だが、このCDではまたライヴ特有の緊張感と演奏家同士の巧みなやり取りも堪能することができる。尚アルバン・ベルク四重奏団はこの他にシューベルトの『鱒』及びブラームスのピアノ五重奏曲も録音している。