「妖精」オードリー
★★★★☆
私がオードリーを始めて見たのは、名画座での「昼下りの情事」でした。そこに見たのは、茶目っ気一杯の爽やかな少女でした。実際には、ゲイリー・クーパーとの年齢差の影響で極端に若く見えたのでしょう。
その後、同様に「ティファニーで朝食を」「ローマの休日」なども見ました。そして、「妖精」と言われる彼女の虜になって行きました。
辛うじて、同時代的に見られたのは、「暗くなるまで待って」で、そこでは彼女の盲目の演技に魅了されました。
そして、映画から遠ざかっていた彼女が、スピルバーグの要請に答えて、「オールウェイズ」に天使ハップ役で登場した時には、ちょい役ではあるものの嬉しさで一杯になった記憶があります。
そんな彼女の人生をこうして読んでみると、家族への憧れとスターとの間で、苦悩している姿が見えてきます。彼女にとって、天賦の才に恵まれたことが、彼女の望みとは相容れなかったということでしょう。
それにしても、あれだけの容姿を持ちながら、その身体的なコンプレックスに悩まされていたとは、信じられない思いです。
この本を通して読んで、彼女の演技に対する真摯さ、打ち込み方には頭が下がります。これが、プロということでしょう。
シンデレラ・ストーリーとも言える「ローマの休日」でのハリウッド・デビューから、十数年という短い間にこれだけ輝いた女優はいないのではないでしょうか。その表舞台の輝きの裏で、私生活の必ずしも幸せとは言えない生活があったとは意外でした。そんな苦悩を見せずに、輝いていたオードリー、見るものを常に勇気付けてくれたオードリー、最も好きな女優オードリーに感謝したいと思います。
尚、この本にはユニセフの活動も含めた、詳細な「年表/資料」が巻末に添えられており、本文と共に、オードリーの人となりを理解する上で、非常に参考になりました。