映画史に残る作品のひとつ
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私の好きな作家であるアントナン・アルトーがマラー役として出演している作品。ナポレオンという主題が「革命」と対比されるように、無声映画は、たえず現在の映画に挑戦し続ける。映画を斜めからみている人は、よく無声映画に回帰してしまう悪い癖があるのだが、この作品に関しては、ぜひ見るべきだろうと思う。残念なことは、イタリア遠征までしか描かれていない点であって、ぜひナポレオンの死まで描いて欲しかった。
無声映画の傑作
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私の留学していた大学の映画部では、毎年夏休みに無声映画に音楽学科の教授がシンセサイザーの生演奏をつけて上映する企画があった。映画は「光」と「残像」の芸術であることを再認識することができた。この作品も、大学の構内の厚生施設の映画館で観た。日本武道館での上映会を見逃していたので非常に楽しみにしていた。期待を裏切らなかった。廉価版のDVDで家庭で楽しむことができる。最近のよい音響と大きな画面で見れば、劇場での迫力はよみがえる。まさに英雄ナポレオンの叙事詩。
グリフィスの「国民の創生」、エイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」と並ぶ無声映画の傑作だと思う。
映画好きなら絶対…
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見ておくべき作品である。私は武道館での上映を見ているので
本来はその形式での映写(3面マルチスクリーン)が絶対条件だが、
しかし監督アベル・ガンスの気宇壮大な作家精神には
DVDでも少しは近づけるのではないか。
ちなみにこれはフランシス・F・コッポラがオリジナルネガから修復したもの。
もちろん映画人としてガンスに敬意を表したのである。
音楽をつけたのは父のカーマイン・コッポラ。
冷徹な野心家
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冷徹な野心家の個性が音と映像で理解できる作品。
前半は家柄による差別、同僚の嫉妬、頑迷な上司といった障害にもめげず、
ひたすら自己研鑽する若き砲兵士官がツーロンの戦いで好機をものにするまでを描く。後半はフランス革命の政治的混乱の中で、幾多の政治的危機を乗り越えながら「カエサルの再来」になるまでを描く。知識としてルソーの理想を知っていたボナパルトが、革命で暴徒と化した民衆が生首を掲げて練り歩く姿を見てニヒルな笑みを浮かべたりと冷徹な野心家の個性が巧みに描かれている。
テルミドールの反乱と投獄の時間的前後関係が史実と異なる。