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パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (上)

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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絶頂期の帝国諸相を軽やかに点描 ★★★☆☆
 「パックス・ブリタニカ」なるタイトルを見て、大英帝国の成立・発展の歩みや支配の構造等を解説するような本なのかと思っていたのですが、実際に手にとって見た本書は、そうしたイメージとは些か趣を異にするもののようです。すなわち、帝国の絶頂を象徴した女王即位60周年祭の年、1897年を中心として、高さの極みに達した帝国のさまざまな場面を取り上げることにより、「大英帝国」とはいったい何だったのかを大づかみに解明しようと試みているようです。著者は本書を「文章をもって描いた肖像画」と表現していますが、まことに言いえて妙と言えましょうか。
 さて、この上巻で取り扱われているのは、帝国を支えた人々の素顔や感情、辺境植民地における統治の実態、各領域の多様性、そして帝国全体をつらぬこうとする法や制度の状況などです。人種的偏見や鼻持ちならぬ階級意識に染められつつも、キリスト教的文明主義や法の支配を真剣に信じる英国人。眩暈を感じるほどの多様性と混乱の中でも、どこかしら帝国的色彩の共有を感じさせる諸領域。大英帝国なるものを成り立たせる、複雑で興味深い背景を垣間見る思いがしました。
イギリス帝国主義への賛歌といっていいでしょう ★★★★☆
実は私はこの本は英語でしか読んでいません。それなのにレビューを書くのはルール違反かもしれません。著者は英国では有名な旅行作家で、数多くの作品がありますが、その特殊イギリス的なテーマの選択や背景のせいでしょうか、あまり邦訳はされていないようです。その中には、香港、英国建築に与えたインドの影響、トリエステなど興味深い作品が満載です。今でも時々financial timesに彼(彼女?)のtravel essayがよく掲載されています。もともとこの作品は、3部作で、かなりの時間(出版の時期を見ると10年以上)をかけて、世界中の英国帝国主義ゆかりの場所(その中には有名な場所から、ほとんど聞いたこともない場所まで含まれます)を実際に訪問して書かれた作品です。確かにイギリス人なりの公平感を持って、英国帝国主義の影の側面も取り上げられています。しかし基調はkiplingのwhite men's burdenといっても過言ではないでしょう。究極的には失敗するよう運命付けられた使命にもかかわらず、それを天命(heaven's command)として受け止め、その使命を遂行した多数の有名無名のイギリス人の”悲しさ”が淡々と描かれます。著者の英語は必ずしもわかりやすいものではありませんが、独特の魅力を持っており、イギリス人はこの描写の中に、私たちには理解することのできないノスタルジーと満足感を感じるのでしょうか。そして私たち日本人は、この面の皮の厚さと、反省なるものとは無縁の普遍的な自信に驚かされるだけです。日本人にはこのような筆致で自分たちの”ささやかな”植民地の歴史を振り返ることはできないのです。