古代文明の謎解きに挑む意欲的大著!
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著者はシュメールの神話から有史以前の人類の本当の歴史を読み解く著書で知られている。その著者が数々の証拠からシュメール文明と中南米の古代文明との関係をあぶり出す極めて刺激的な大著である。
神話を解読する類の本は、内容を理解するのが難しい上に、その解釈が正しいかどうかも確かめようがなく、すっきりした読後感を持つことはなかなか難しい。本書も例外ではないが、その大胆な仮説と、本書に示されるインカ文明の驚愕すべき技術力を示す数々の遺跡の写真は、読者にスケールの大きなSF映画を見ているかのようなワクワク感を感じさせてくれる。
インカ文明が、一般的に言われているようにスペイン人に滅ぼされる前のたかだか500年間だけの文明ではないこと、インカ文明の遺跡と言われている巨石建造物の驚異的な精度での加工はスペイン人の侵略を受けた時代のインカの技術では到底不可能であったこと、すなわち、太古に現代文明に匹敵する技術力を持った文明があり、それが滅びたと考えられることなどが示される。
マヤやインカなどの神秘的な文明が、たかが1000年か2000年ほど前の文明であるなどという、直感的に受ける印象と大きく乖離する定説を渋々受け入れていた人間にとっては溜飲の下がる思いがするであろう。
まだまだ古代文明の謎を完全に解き明かしたとまでは言えないが、著者の「地球年代記」シリーズ全5冊のうちの1冊とのことなので、残りも併せて読むことで読者自身の説を作り上げるのは楽しい作業になるのではないだろうか。