本書は、サイードの全著作からとくに重要な章を選んで収録、1966年のデビュー作、ジョセフ・コンラッド論から、最近発表された回想録『Out of Place』(邦題『遠い場所の記憶 自伝』)まで、もれなく網羅している。対象がなんであれ、シオニズムであれパレスチナ人の自己決断であれ、ジェイン・オースティンであれイエイツであれ、はたまた音楽であれマスコミであれ、サイードはその手に触れるテーマのひとつひとつに、仮借ない知性の光を鋭く投げかける。一般読者にとっては読んでおもしろく、政治、歴史、文学、文化の研究者にとっては、つまりサイードの著作が影響を及ぼし、ときに枠組みさえ変えてしまった分野の研究者にとっては、必携の参考書といえる1冊だ。