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女王様と私 (角川文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本格ミステリのゲーム性を内包した新社会派サスペンス ★★★★☆

本作は三部構成。

わずか数ページしかない「真藤数馬のうんざりするような現実」の後に、
本作の大半を占める「真藤数馬のめくるめく妄想」が展開されています。


わざわざ「妄想」と明示されていることからも判るように、このパートで繰り広げられる
小学六年生の少女を標的とした連続殺人事件には、リアリティを度外視したゲーム的
なルールが採り入れられており、些かご都合主義的(序盤には××のつるべ打ちも)。

とはいえ、無節操に妄想が垂れ流されているわけでもありません。

冴えないオタクとしての自分を対象化する主人公の自意識に基づき、ある程度客観的
な世界観が構築され、さらに本格ミステリとしての謎解きも、大筋では破綻のないもの
になっているのが、本パートのミソです(作中でも、ある登場人物が、ゲームはピンチが
醍醐味、何でもアリにしたら虚しい、といった主旨の発言をしています)。


 また、オチが安易、と感じる向きもあるかと思いますが、構成によって
“予告”されている以上、少なくとも作者はそれを主眼とはしていません。


沈鬱で、カタルシスのないオチに着地するまでのプロセスとホワイダニットが読みどころで、
すっきりした「いい話」を読みたい方には決してお勧めしませんが、本格ミステリの方法論
を用いて“時代”を捕捉しようとする作者の意欲的な試みに興味がある方は是非ご一読を。




オチではなく、プロセスを娯しむべき快作 ★★★★☆

本作は三部構成。

わずか数ページしかない「真藤数馬のうんざりするような現実」の後に、
本作の大半を占める「真藤数馬のめくるめく妄想」が展開されています。


わざわざ「妄想」と明示されていることからも判るように、このパートで繰り広げられる
小学六年生の少女を標的とした連続殺人事件には、リアリティを度外視したゲーム的
なルールが採り入れられており、些かご都合主義的(序盤には××のつるべ打ちも)。

とはいえ、無節操に妄想が垂れ流されているわけでもありません。

冴えないオタクとしての自分を対象化する主人公の自意識に基づき、ある程度客観的
な世界観が構築され、さらに本格ミステリとしての謎解きも、大筋では破綻のないもの
になっているのが、本パートのミソです(作中でも、ある登場人物が、ゲームはピンチが
醍醐味、何でもアリにしたら虚しい、といった主旨の発言をしています)。


 また、オチが安易、と感じる向きもあるかと思いますが、構成によって
“予告”されている以上、少なくとも作者はそれを主眼とはしていません。


沈鬱で、カタルシスのないオチに着地するまでのプロセスとホワイダニットが読みどころで、
すっきりした「いい話」を読みたい方には決してお勧めしませんが、本格ミステリの方法論
を用いて“時代”を捕捉しようとする作者の意欲的な試みに興味がある方は是非ご一読を。




可もあり不可もあり ★★★☆☆
歌野作品は社会問題と絡ませた作品が多い。本作も引きこもりの男を中心に物語は展開する。他の方も書かれている通り、最後のオチ(結末)の部分に関しては賛否両論あると思う。私自身も他の結末は創造できなかったものかと残念に思う。しかし序盤からちょこちょこと仕掛けを施しちょっとずつオープンにしていく手法と、物語のテンポの良さから読み進めていくのは楽しかった。引きこもり男の思考回路をリアリティを感じさせながらここまで書けてしまう歌野さんの抽斗には今回も脱帽。
それは反則でしょ! ★☆☆☆☆
『小説なんか所詮妄想だよ』って、小説家自身が言ってる
みたいなもんで、いただけない。

44歳オタクの妄想に付き合わされる読者はたまったもので
はない。

“葉桜の季節に君を想うということ”で、そのどんでん返
しに強烈な魅力と可能性を感じて他の作品10作ほどを読み
漁ってこの作品に行き着いたのだけれど…。
結論として“葉桜〜”以上の作品は無かった。
そして、この作品はその中でも最低。

冒頭にも書いたけれど、小説は小説家の“妄想”では無い
と思う。
考えに考え抜いて設計し、仕掛けて、読者の満足感へ着地
していくものだと私は思うので“女王様〜”は小説として
反則だと思う。
かもーん、G! ★★★★★
やめられないとまらない。完全アタマがトリップ+スパーク。

歌野晶午ってすごゥィでそ。

・・あぁまずい、絵夢に乗り移られる!!!



女王様と私、という意味深なタイトルにひっかかった人に、

歌野晶午初心者にはことさら声を大きくして言いたい。




心して、読め。





主人公は44歳の引きこもり・・とはいえ本人にはその認識はなく、週一で吉牛にも行くし

アキバに月一でも行くから自分は引きこもりではないと断じている。

今日は妹・絵夢を連れて、日暮里(!)でデート。

そこでいきなり黒い帽子に全身黒づくめの洋服の攻撃的なXXからいちゃもんを付けられ・・!



絵夢のしゃべる独特な言い回し、メールの女子高生チックな表現方法、

時おり挟まれる主人公のおたく口調の蘊蓄。

ちょっと見イマドキのストーリー展開で、

おたく中年が女王様に振り回されるのを読者は高みから見物することになる。



ところがいきなり、物語は急転する。

詳しく書くとネタばれ一直線なので避けるが、最初の女王様の出会いの軽いジャブ、

女王様との主従関係の転換でボディーに衝撃、女王様に迫る魔の手のあたりでフック、

とどめにテンプルにストレートをもらった後に、中空でもう一度アッパーをもらう羽目になる。

で、気がついたら観客席にいた自分の目の前に降ってきたのはずだぼろの自分、という感じだろうか。

この、いつの間にか立場が反転しているというか、

いつしか自分の見ていたものが目の前で変化する感覚は、すげえぞ。と、言いたい。







以下、ミステリとかこの手の話が好きな人にはネタばれの可能性あり。

自称・ミステリマニアは読まない方がいいかもしれない。







・クラインの壷(井上夢人)

・イニシエーション・ラブ(乾くるみ)

・慟哭(貫井徳郎)

・ハサミ男(殊能将之)


あたりと同じ芸風。

一気にGを感じたいなら勧めないが、あえて併せて一気ヨミし、

作者の思惑通りにだまされるカイカンを味わいつくすのもまたよし。