自分で測量はしませんが不動産の仕事に関係すると思って読みました
★★★★☆
本書の内容は、不動産登記のための測量と道路を造るような公共工事のための測量のルールが結構最近になってやっと統一されために、今後どんなことが必要と考えられていて実際何が行われているかの解説です。本書によるとその一環として全国の都市に大量の測量標識が最近設置されているそうなので、実際に近所で下を見ながら散歩してみたら結構すぐに見つかりました。
測量や公共工事に関わる方向けのように書かれているのですが、本当は不動産取引に関わる者は知っていないとまずいのではないか、というのが一読しての感想です。
というのは、例えば最近流行のアパート経営のノウハウ本では「買い取る時に測量しないでいいと言えば〜万円くらい安くなる」とまるで裏技のように書いてあったりします。このノウハウの当否はコメントしません。ですが、もし「でも測量しないと結局損をするのでは?」と疑問を持った人がいて判断材料を求めてきたとしたら、どういう仕組みになっているのかや最近仕組みが変わったことはあるのかといった情報をきちんと提供することは必要だと思っています。
本来は不動産登記の専門家の土地家屋調査士さんがその種の情報源になってくれるはずで、測量技術のことまで皆が細かく知っている必要はもちろん無いのですが、その土地家屋調査士さん自身が各地で新しい仕組みづくりに直面しているとなると話は別です。自分で測量はしないにしても何が問題なのか概要くらいは知っておかないと、受け売りでは見当ちがいの説明をしてしまいかねません。
本書は登記と公共工事の両方の測量の関係者に読んでもらい、各地で必要な測量のあり方を考える基礎として役立ててもらいたいというスタンスで(そのことは本書の中で何度か触れられています。)書かれています。そのために他の測量の解説本に比べて表現が平易で、専門的な資料の部分はとばして解説部分をざっと読むことで、測量の精度などの技術的なことは良く分からない私でも一応測量の制度がどんな方向に向かっているのか概要はつかめたように思います。
自分の手で測量をしない身としては、登記の測量のやり方が変わることで不動産の図面について何か影響があるのかなどの解説を載せておいて欲しかったところで、測量に関する細かい資料の部分が役に立たないなあ、という思いはあります。しかし土地の測量について疑問を持った方に情報提供はできるべきだと考えると、不動産取引の関係者にしても本書が手元にあった方が安心だと思います。