インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

文壇アイドル論 (文春文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
Amazon.co.jpで確認
   文壇、などといういささか古風な言い回しに、アイドルという単語をぶつけてくるところが著者の痛快さだ。その小気味よさは、むろん本書全体の切り口とも重なる。

   ここで「文壇アイドル」と呼ばれるのは、村上春樹、俵万智、吉本ばなな、林真理子、上野千鶴子、立花隆、村上龍、田中康夫の8人。いずれも1980年代から90年代を中心にマスコミの寵児となった人々だ。これらの著作者がどのように語られ、受け入れられたか(またはおとしめられたか)を追い、彼らスターを生み出した背景について考えようとする。著者の言い方を借りれば、「作家論」論ということになる。

   その視点は、知的で公平、そして少し意地悪だ。村上春樹作品にちりばめられた謎の解読に血道をあげる批評家たちは、ロール・プレイング・ゲームになぞらえて「文学オタクのハルキ・クエスト」といなされ、吉本ばななはコバルト文庫など少女カルチャーの末流と解釈、「文芸作品というより……キャラクター商品に近い」と位置づけられる。かと思えば、林真理子と上野千鶴子が「男社会」の中でいかに対照的な受けとめ方をされたか解き明かし、作家として黙殺されることの多い田中康夫の批評性を的確に指摘する。

   そうした個々の作家の捉え方もおもしろいが、世の価値観が揺らいだ80~90年代という時代がこれらのアイドルを必要とした、という分析がなにより鋭い。本書は文化論であると同時に、すぐれた時代論でもあるのだ。(大滝浩太郎)

時代が語る日本の文学という文脈 ★★★★★
文壇アイドル論 斎藤美奈子 岩波書店 2002

初出は1996−2001 文學界、短歌と日本人、世界の各誌
1.文学バブルの風景 村上春樹、俵万智、吉本ばなな
2.オンナの時代の選択 林真理子、上野千鶴子
3.知と教養のコンビニ化 立花隆、村上龍、田中康夫

さすがに全ての方が今もご活躍である。読んだ事の無い作家(今ではその枠を超えている方が3のカテゴリー)でも、その存在は知っているといく方が世の中には多いだろう。
斎藤さんの文芸評論はどの評論家も同じだとは思うが、好き嫌いがあるだろう。自分にとっては非常に分かりやすい説明をしてくれているように思うし、もちろん、それは違うんじゃないの?と思う箇所もあるけれど、総体として同意する。
こんな林真理子評はどうだ、「直木賞の選考委員にも就任し、私生活では一女の母にもなった林真理子は、いまや押しも押されぬ大文化人です。若い女の行儀の悪さを叱り、豊かな私生活を誇示し、皇室への親近感を示す。階層移動の成功者が保守反動化するのは自然の流れというべきでしょう。お城の女主人になってしまたシンデレラにとって、なにより大切なのは城を守ることであり、なにより警戒すべきは第二、第三のシンデレラの出現することです。」
80年代、あの栄光の時代 ★★★★★
世には、人が褒めるかくさすか、その二択で真っ二つに割れる物や人が存在する。両者はその対象を挟んで、激しく対立しているはずなんだけれど、よくよく考えてみるとあら不思議、その「対象となっているものに並々なる想いを持っている」という点では、なんだ実は仲いいじゃーんという構図になっていることが、たまにある。

斎藤美奈子が今回ターゲットに据えたのは、80年―90年代に、文壇やジャーナリズムでヤジや罵倒、賛辞や支持を、嵐のように受けていた「アイドル」たち。村上春樹、俵万智、田中康夫を巡って、雑誌誌面で激しく交錯する、「ハイセンス」な文体の応酬。そう、本書が論じる通り、80年代はコピーの時代だったのである。

軽妙な文体でありながら、さわれば切れてしまいそうな明晰な分析がなされているのは、いつもの斎藤美奈子本とたがわないのだが、今回はいつもとは違い、すこし湿っぽくなっているように思えるのは、僕の気のせいか。特に中盤、林真理子と上野千鶴子の段になると、雰囲気が一変。一時ながらも「女の時代」を築きかけ、文壇の脂ギッシュなおじさんたちの鼻をあかせた、かつての彼女たちの栄光に、やはり斎藤とて個人的な思い入れは捨てきれないのかなと、すこし勘ぐってしまうわけである。
すこぶる明快で面白い ★★★★★
まず、端的に論旨が明快です。「作家論論」だと著者もいうように
取り上げられている作家、作品がどういう論じ方をされていたかを
鋭くユニークな切り口で整理してます。要所要所を端的な比喩で総括
してみせ、大変腹におちました。
個人的には上野千鶴子や田中康夫の章が面白かった。
文学について語ったものって、何が結局言いたいのかわからないような
(それであるがゆえに何か高尚な内容に触れているかのように錯覚できる
のかもしれませんが・・・)文章が多いのですが、本書は文章そのものの
明快さ、思い切りの良さでは出色だと思います。
俵万智論が素晴らしい ★★★★★
あまりレビューで触れられていないが、個人的に読後一番印象に残っているのが、俵万智についての文章。詳しくは読んでいただく方がもちろん良いのだが、端的に言えば俵万智に「新しさ」はないということ。

「新しい」歌手(短歌ではなくポップスの)が現れても、「新鮮な」ドラマを見ても、結局のところ中身はありふれた内容でしかないと思っていた私には、その理由がわかった気がします。日本人は(人は?)結局のところ「新しい」ものではなく、自分の良いと思っている事をかたちを変えて表現するものを選択しているに過ぎないのであろうと。つまり本当に新しいものなどに大衆的な人気は望むべくもないのである。
そういったものの例として相田みつをが登場するのは痛烈かつ痛快。実に素晴らしい視点であった。
アイドル論(偶像的な意味で) ★★★★★
泡銭なんていらない 神話崩壊なんていらない
私たちはただゲームとして春樹を読みたいだけ

権威なんていらない 伝統なんて形だけで十分
私たちの読むサラダやバナナにはピンクの背表紙がついている

80年代の文壇アイドルたちはカタカナ職種を名刺に乗せて
日本に残った階層なんてものをバリバリ踏みしだいて行った
そんな時代に生きていたらなといいかけて止めた。

永い永い「失われた10年」から始めてしまった僕らなのに
足下の地盤のそこかしこには彼らの残骸が残っている
たとえ君がアンチどころか意識から消し去ろうとしても。

だとしたら、一度その骨組みを眺めて見るのもいいんじゃないだろうか
これは、80年代を知らない人への80年代を乗り越えるための入門書になるから。