吉行淳之介の文学的自伝。少年時代の文学作品との関わりから始まり、戦時中の学生時代に作家を志す。戦後のドサクサの中、雑誌編集者として必死に生きる傍ら、少しずつ小説を書きながら自分だけの表現を発見していく吉行青年が初々しい。結核で入院している病室に、深夜看護婦が芥川賞の受賞を知らせにくる場面は小説以上に小説的。
吉行の青春を回顧する熱い息吹が切々と伝わってきて感動的。
さらに安岡章太郎、三浦朱門、庄野潤三、阿川弘之との友情や、時代の雰囲気(文学的にです)を絶妙に描き出して何度読んでも飽きる事がない。
吉行ファンだけでなく、本物の、嘘偽りのない自伝を求めているかたにオススメ。