スピード感が堪らない
★★★★★
つくづく小松左京さんは、名文家だと思う。
スピード感のある文章、余分な言葉をそぎ落とした明解な文章には、いつも感心する。
最近のうだうだした文章を書くライターには小松左京さんの爪の垢を煎じて飲ませたい。
以前読んだ「この宇宙」という短編の最初の1ページなんか、稲垣足穂さんの「弥勒」の出だしのように、リリカル
でイマジナティヴですよ。ほんとに。
それはともかく、
何といっても、小松左京さんの良いところは、人類に対して(当然人生に対しても)肯定的なこと。
SFとは何かと問うて、最後の文章が「SFとは希望である−と」で締めくくるというところが、面目躍如。
来年は喜寿のはずですが、まだまだ頑張っていただきたいものです。
SFは、《究極の文学》である。
★★★★★
本書を読んで一番感銘を受けたのは、小松先生は《SFの大家》である前に、やっぱり一介の《文学青年》なんだな、ということである。小松先生が、《SF小説》という表現手段を選んだのも、一人の文学青年として、SFの持つ《文学的可能性》を感じたからなのだろう。そういう意味で、本書に書かれた、《SFとは文学の中の文学である。そして、SFとは希望である》という言葉には、千金の値があります。私が、ここまでSFにこだわるのも、《SFは、究極の文学である》という気持ちが、強くあるからだったりします。たかがSF、されどSF。SFは、永遠に不滅です(←ホントか?)。
SF人種っていると思う。
★★★★★
SFの創世記とSFが熱く燃えていた時期を体験、作り上げた著者の迫力に満ちた回想。
小松左京のように小説を書いて生きていけたら楽しいだろうなあ。
そういえば私は子供の時からSF漫画や小説に親しんでいたけど、オタクになったのはたぶんスターログが創刊された頃、意味もよくわからずそのかっこよさとこう、なんだかもやもやとする心地いい流れに身をまかせた結果だ。
SFが一番力を持っていた頃だったのだから、ある意味、不可抗力である。
60年代70年代の関西文化史
★★★★☆
久々に小松左京先生の本です。
自伝的な内容ですが、
日本SFの黎明から、
万博の誕生、「さよならジュピター」の製作秘話などなど、
このあたりの文化現代史的にも読めます。
京大人脈と左京さんとの関係など、
興味深い話がいっぱい書いてあります。
梅棹忠夫先生と小松さんと親密だったのも知らなかったなぁ。
SF勃興期のエネルギー
★★★★★
小松左京の自伝。私にとっては、小松左京、辻邦生の二人が若い頃にハマった作家なので、出てくる作品はほぼ全部読んでいるし、若い頃にやっていたラジオ番組「題名のない番組」も毎週聞いていたし、自分自身の若い頃をなぞる気分で読んだ。
再認識したのが、小松左京の文体が好きなのだなあ、ということ。読むスピードが違う。どんどん読める。楽しく読める。それで、SF勃興期のエネルギーや、高度成長のエネルギーを感じることができる。そう、小松左京の作家人生は SF の勃興から発展、拡散への歴史そのものだ。あの頃の SF は面白かったなあ。小松左京は、全部が SF になったんであって、廃れたのではないと言うけど、あの頃のエネルギーはないよなあ。
本人はまだまだそのつもりはないと言うけど、こんな自伝や日経新聞の「私の履歴書」を書くようになったら、もう上がりかもしれない。いくつか未完の作品もあって、おとしまえをつけて欲しいような気もするけど、未完も未完で好いのかもしれないと思うようになった。全集が出るとか言ってるけど、どうしよう。