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果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川春樹事務所
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幼年期の終わりは始まりだった ★★★★☆
 読むのに一番苦労したのは、第九章「狩りの終末」である。時空を無視した(股にかけたともいう)壮大な反進化と進化抗争の末に、反乱者は行(エン)の行者や果心居士やニュートンでしたでは、ここまで来て半村良かよ、と正直脱力した。「家畜人ヤプー」の後半の失速にも似ている。作者自身も追跡者マツラの口を借りて、―なんと(君たちは)みみっちくなってしまったのだ。宇宙の全秩序を律するものに叛逆をくわだてたルキッフの徒の裔が、一つまみの人間の反抗を組織するのか―と失望の弁を記している。しかしながら・・・

 内容は、小松流「幼年期の終わり」みたいだ。地球が熱死に至る直前、超高度生命体が地球人の一部をすくい、さらなる進化の階梯に導こうとする。しかし、進化の実体、正体は、「人間」を完全に放棄(または個の破棄・脱却)するという、無慈悲極まりない(非人間的なもの)だった。その高度生命体にしても、仕事でやっているに過ぎず、さらに上階があるらしい。彼らが受け持っている「進化」は、その上位の計画(趣味?)で、一種の果実の生育や取り入れ、気に入った盆栽つくりのようなもので自然にまかせたものではないようだ。

 宇宙の正体はわからないままだった。存在することの意味は、生きるという意味とは違うらしい。ここまで来ると「神」という概念を思い起こさせるが、本書にその言葉はない。「神」もたぶん進化の階梯の最終段階ではないのだろう。生命の意味ははたして多元宇宙的次元にとってどんな意味があるのか。進化の反逆者ルキッフとは誰か。進化の果てには何が。答えは示されてはいなかったように思う。

 この小説が宗教的奇書としてではなく、SF「文学」の傑作として残っているのは、読む者に「百億の昼と千億の夜」同様に「虚無」という言葉を思い知らせるところなのかもしれない。極北の想像力であり、限界かとも思える。
何度も読んでしまう。 ★★★★★
何度も読んでしまう。単純に面白い。
1965年に書かれたものであるが、まるで一片の古さも感じない。
描写がすばらしく、風景、人や物の造作、見たこともないはずの「モノ」であるのに、何故か脳裏に浮かぶ。
言いすぎかもしれないが、最終章でさえもぼんやりとイメージが浮かぶ。
そして、何故か感動し涙腺が緩む。
人間は儚く、ちっぽけな存在だが、一人一人の愛情・人生は時空を超えたところにあり、悲しくも素晴らしいと思える。
小松先生はすごい。 ★★★★★
何度読み返したかわからない。ともかくすごい。素晴らしい。中生代の世界にぽつんとあった機械。現代日本では、発掘された普通ではない砂時計を前にとまどう学者達。古墳に見える不思議な存在。主人公野々村の行方不明事件。待ち続ける佐世子。100ページすぎたところでそれから年数が経ち、人々は死に、事件は風化し、一度話は終わり、そして第三章からいよいよ話の始まり、未来世界に。入り組んだ時空間。砂時計や古墳の謎がわかってくる。そして、野々村の秘密も。そして最後。また現代日本に戻る。野々村を待ち続けて老いた佐世子の世界に。小松先生はすごい。ちなみに、日本沈没の第三部とおぼしきエピソードがこの中に出てくる。
日本的な叙情的SF ★★★☆☆

SFは中学生時代から大好きで数多く読んできたが、日本人の作品はさほど多くない。アシモフやハインラインといった巨匠の作品を始めとして海外の作品はどちらかというと明るくて論理が明快な作品が多い一方で、日本人の(少なくとも当時の)作品は内省的でどちらかといえば陰鬱な作品が多いイメージがあったからだ。

小松氏の作品も大ヒットした日本沈没以外は読んだことがなかったが、あるテレビ番組で本書を取り上げていたので興味を持って読んでみた。時間旅行・パラレルワールド・超能力といったSF的な素材を扱っているものの、それ自体を目的にした内容ではなく、これらを土台に人類の種としての行く末を描くことに挑戦した作品だ。

正直言ってストーリー展開はかなり強引で、論理的には無理がある部分も見受けられたが、作品の持っている叙情的な雰囲気に乗せられて最後まで読み進めることができた。主人公は野々村と恋人の佐世子の二人だと思うが、時間の流れに飛び込んで時空を駆け巡ることになる野々村が、最後に記憶を失いながらも佐世子の元に帰ってくるところは共感できた。

但し読後感がすっきりしないのも事実。比べること自体に無理があるかも知れないが、自分にとっては同じ時間物であればアイザック・アシモフの「永遠の終り」の方が素直に面白いし感動できる。興味がある人は日米の巨匠の作品を読み比べてほしい。
解説にひとこと ★★★★★
こんな複雑なものは、よっぽど事前に計画を立てて綿密なノートを作って書いたのだろうと想像していましたが、「作者あとがき」によるとそうでもなく、「エイ、ヤッ」みたいな勢いで書いたようで、それもまた驚きです。そのあとがきは、小松氏の人となりが伝わってくるような非常にいい文章でした。その中で、次は同じテーマでもっと満足のいく作品を書きたいと述べていらっしゃいますが、それは果たして実現したのでしょうか。非常に気になって、続く「解説」を読むとその事には一切触れられておらず、解説ならぬ感想のようなものが綴られているだけです。せめて小松作品やSF小説全体における本書の位置づけ(後者についてはわずかに触れています)を解くのが解説というものでしょうに、全く解説の用をなしていません。
読みごたえありました ★★★★★
半世紀も前に書かれたという事をふまえて、すごい作品でした。 次々と先が気になる展開です。