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物情騒然。―人生は五十一から〈4〉 (文春文庫)

価格: ¥650
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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政治音痴が政治を語るのはもう沢山 ★★★★☆
著者の4作目となる、21世紀最初の年の随想集。この年、戦後政治史上最凶の人物が国民の圧倒的な支持を得て日本の覇権を握り、アメリカでは9.11が起きて「対テロ戦争」とやらが強行され、そして、古今亭志ん朝と山田風太郎とが世を去った。著者の憂愁は深い。

芸能など「文化」に対する著者の洞察力は相変わらず驚異的である。マスコミにひしめく凡百の自称評論家・コメンテーターの皆さんは、この人の著作を読み、己を恥じて引っ込んでほしいと思う。しかし多難なこの年、著者の興味はより多く時局に向いている。それがいつものことながらあまりにナイーヴ(もちろん言葉の本来の意味です)であるために、私はずいぶん白けた。だいたいこの人、政治家を支持するとはどういうことか、理解していないのではないか。ある人の、特定の政策だけを支持したつもりでも、実際にはその人に「全権委任」したことになるのを、なぜわからないのか。当てが外れてから怒ってももう遅い。熱狂から罵声へと野方図に転換するのは庶民の常であり、著者自身そうした態度や人を「コロコロ族」(p.116〜)と軽蔑しているのに、時事問題に関するかぎり、著者も同じ穴の狢である。長い射程で国の行く末を考えなければ、アメと鞭とを使い分ける政治家に踊らされ、いずれ国を誤ることになるのだ。この本の中で「改革」を期待した著者は、この年以後、確かに「改革」を目にすることになる。しかし、それらが悉くといってよいほど失敗し、現在に負の遺産を残していることに、果たして今、著者は気づき、今の判断に生かしているだろうか。