作者は日本人のメンタリティーを戦前と変わらないとし、いつまでも反省のない愚行を嘆き、破壊されてゆく美しき日本を悼む。本書は表題から何やら人生論のような内容を予測していたが、演芸やら映画やらについての短文、現代日本人の生態を嘆くコラムなど、雑誌の連載(1998年)を掲載順に集成した本であり、その内容はまさに彼ならではのスタンスである。現代日本人の言行に対する冷笑・慨嘆・罵倒には正に我が意を得たりの気分であるが、少々この作者は「うつ」なのではないか、とも思う。以前の論調よりも、さらに嘆きが増しているせいである。もっとも初段に書いたように、ここ数年の日本人の痴愚化は目を覆うばかりであるから、まともに嘆いていたら彼のようになるのも頷ける。
戦前のメンタリティーを嫌悪する彼がなぜこの出版社に連載し、本書をも出版したのか理解に苦しむけれども、本書の内容は身近な風俗時評として秀逸である。お気楽で下世話な人生を良しとしない人にはお勧めである。
著者の言葉を借りるならば、鋭利なナイフを見ているようで気持ちが良い(昔、著者がビートたけしを表したときの表現)。
ふと思ったのは、著者が、モーニング娘をどう評価しているのかを聞きたい。もう既に、書いているのかもしれないが・・・。