JPEG特許騒動の話
★★★☆☆
USのフォージェント社は、JPEGという規格が自社特許に抵触することを発見します。そして、JPEG技術を使っている会社(三洋電機やソニー)から特許使用料を徴収することに成功します。しかし、この問題となる特許(通称、「672特許」)は、長い間日の目をみなかった知られざる特許です。672特許はM&Aなどによりさまざまな会社を転々としながら、最終的にフォージェント社のものとなり、その経営陣に「発見」されたときには権利満了間近でした。特許権というのはつくづく「財産権」なのだなと思わせられました。「発明者の権利を守る」という古典的な側面はもちろんあるのですが、発明者の志の結晶という情緒的な面だけではなく、「カネを作るための情報資産」という冷徹な側面を認識する必要があります。
薄い本ですが、若干文章が読みにくいのがマイナスです。
メーカーがパテント・トロール専業になった事例として興味深い
★★★★☆
パテントトロールや、Patent Hoardingの問題はこれからも電気自動車関係などを中心にあらゆる分野で深刻化すると思われる。特に、日本がターゲットとなるケースが多いだろうから、読んでおくとよいだろう。
この本は、実業のベンチャー企業が、虚業のパテント・トロール企業に変身する事例を詳細に紹介し、その原因を分析している点で面白く読めた。
したがって、特にベンチャー経営者で知財への意識が少ない人は目を通しておくべきだろう。残念なのは、パテント・トロールに対する抑止策についてまでは書いていないこと。その点で星ひとつ減で4点。
パテントトロールの7つの発生原因が理解できる
★★★★★
「パテントトロールが生まれた7つの理由」という書名にしたほうがよいのではないかと思った。NHKクローズアップ現代(国谷裕子キャスターの)でもパテントトロールを特集していたが、あれを見ると、パテントトロール会社ではなく、なぜ個人の発明家が自分で大儲けしようとしないのか不思議だったが、この本を読んで、発明者が特許をいったん死蔵してしまうのが理由、というあたりがはじめて理解できた。
本の前半のほうの2つのベンチャーの合併云々の話が長かったが、読み進めるにしたがって、結局そういうところを理解しなければパテントトロールが生まれる種、背景は理解できなかったということが伝わったので満足できた。いきなりインテレクチャルベンチャーズを分析してもパテントトロールの背景はわかりにくいと思う。