ナポレオンの侵攻が迫る19世紀帝政時代のロシア。貴族の娘ナターシャ(オードリー・ヘプバーン)を想いつつ、告白できないまま別の女性と結婚したピエール(ヘンリー・フォンダ)。一方ナターシャは、ピエールの親友アンドレイ(メル・フェラー)と愛しようになるが、ナポレオンのロシア侵攻が彼らの運命を大きく揺り動かしていく……。
ロシアの文豪トルストイの名作を、アメリカで映画化した文芸大作。原作は膨大な長さだが、名匠キング・ビダー監督は実にコンパクトに要領よくまとめあげている。若き日のヘプバーンの華麗な美しさも大きなポイント。音楽担当ニーノ・ロータ作曲による『ナターシャのワルツ』も、忘れ難い余韻を残している。(的田也寸志)
ハリウッドが作った原作とは全く別の「戦争と平和」
★★★☆☆
ソ連版と比べれば、原作に忠実かどうかという比較は全くナンセンス。この作品はトルストイの原作世界を下地にしてハリウッドが作った全く別な世界の「戦争と平和」なのだ。「ベンハー」にしてもそうだが、原作とは似ても似つかない「文学作品」映画をハリウッドはよく作るが、その代表的な1本だろう。主人公たちの恋愛模様を中心に据えて徹底的に青春娯楽作品となっていて、休日の午後にでも寝そべりながら肩が凝らずに長丁場を見ることができるのは、さすがサービス精神旺盛である。しかし、ボロジノ会戦のシーンは炭酸の抜けきったサイダーみたいな出来で、ワンカット2万人を動員したと言う触れ込みは全くの誇大妄想に過ぎない。最大のスペクタクルはベレジナ河を越えるシーンだが、これも現実の渡河は大陸軍と行動を共にした非戦闘員を巻き込んで映画とは比較にならないほど悲惨であったようだ。「この映画を観ることは人生の貴重な経験と言える」という公開時の評価は大げさすぎて全く賛成できないが、誰もが楽しめる古き良き時代の良心的ハリウッド映画ということには全く異論は無い。
トルストイの大作の映画化
★★★★★
原作を読んだ方はわかると思うが、あれだけの話を良く映画にしたものである。
ナポレオンがロシアに侵攻しモスクワは炎上する。戦闘シーンは素晴らしく相当お金がかかっていると思う。
ヘップバーンの若く美しい姿は非常に魅力的である。
結果として、オードリーが中心の映画
★★★★☆
映画が原作を凌ぐことは希有のことであるが、トルストイの大作「戦争と平和」を原作としたこの映画が、そこから抜け出すのを期待するのは酷である。
この映画ではナポレオンはあまりにも矮小化されているし、
ロシアの勝利を確信して微動だにしなかった、茫洋として捕らえがたいクトゥーゾフ将軍の「奥行き」が表現されていない。
なにより、主人公アンドレイが、崇拝していたナポレオンを戦場の意識が遠い状態で見た瞬間から起こった、
「ただ一人の英雄が偉大なのでなのではない。民衆こそが偉大なのだ」という大テーマはどこかに置き忘れられている。
オードリーはアンドレイ役に”ローマの休日”で共演したグレゴリー・ペッグを望んだが、
ペッグはすでに他の映画への出演が決まっていて実現しなかった。
その代役がヘンリー・フォンダだが、ひげそり跡も濃く、目の輝きも鈍く、
アメリカの田舎者かと見まがう彼のアンドレイ役は正直頂けないと思う。
一方でメル・フェラーはなかなかの好演をみせている。
しかし、この映画の極めつけはナターシャ役のオードリー・ヘップバーンであると言わざるを得ないだろう。
彼女の純情可憐さ、愛おしさ、発散する若さのエネルギー・・・。
結果として、小生にはオードリー(と彼女が作らせたジバンシーの衣装)がもっとも印象に残る映画となった。
ヘップバーンの魅力
★★★★☆
ナターシャを演じるオードリー・ヘップバーンがとても美しいです。色々なファッションを見せてくれるのですが、どれも本当にファッショナブルで、それだけで目を楽しませてくれると思います。映画の中で、二人の男性に愛される彼女は、二人とも素敵な男性達だったので、羨ましい限りです。戦争は、失う物だけが多く、何も後には残らない、愚かしいことだと思います。ロシアの冬の厳しさは、特に捕虜の人達が雪深い中を歩き、倒れてゆき、銃殺されるシーンは、何ともいえない気持ちになり、観るに耐えませんでした。戦争をして何になるというのでしょうか。本当に意味のないことです。3時間に及ぶ超大作でしたが、奥深い作品だったと思います。
トルストイも納得
★★★★★
トルストイは晩年に映画の脚本を書こうとしていたらしい。彼の作品は「見えるように」と形容され視覚的要素が強い。つまり、彼の作品は映画に向いている。その様な意味で「戦争と平和」が映画化されるのは当然ともいえる。往年のハリウッドスターは聖書の様な歴史物か文芸物にでることがステータスとされ、オードリーの出演作品の中ではそれほど有名でもないが、実は上記の意味で彼女にとってもハリウッドにとっても非常に意義深い作品である。
長大であることより原作は多くの人から畏怖の念でみられているが、実はトルストイ作品では疾走感が一番大切である。ハリウッド版はやや短いが、その点ロシア版より躍動感が出てよい。何より、原著のナターシャのイメージにオードリーはあまりにもはまりすぎている。
やや舌足らずではあるが、本作はトルストイのよさが出ている。トルストイも見てオードリーに感銘すること請け合いである。