世界大恐慌の時代、映画館の観客に喜ばれたのは、『或る夜の出来事』や『襤褸と宝石』といったスクリューボール・コメディだった。上流階級の人々が道化のごとく振る舞ったり、今までの報いを庶民から受けたりするのを見るのは、彼らにとって大きな楽しみだったのだ。同じような楽しさは、人気番組『The Simple Life』の第2シーズンで味わうことができる。今回、パリス・ヒルトンとニコール・リッチーは、フロリダからカリフォルニアにドライブ旅行を敢行。現金もクレジット・カードも持たない彼女たちは、見知らぬ人々の好意に甘えなければならない。2人が助けを求める男性たちは、料金所やガソリンスタンドやファーストフード店で施しを乞われると、例外なく困惑した様子を見せる…。このシリーズの際立った面白さは、わがままなお嬢様コンビにみっともない体験をさせる点にある。というわけで、2人はヌーディスト向けのリゾート地でメイドの仕事をやらせられたりする。しかし、一見不安そうな顔の彼女たちは、大抵のことに敢然と立ち向かっていくし、お高く留まった態度を最後まで崩さない。その奇行ぶりが視聴者の許容や共感の範囲を超えそうな部分もある。たとえば、2人はヌーディスト向けのリゾート地で堂々と仕事をサボり、客のフリをしてほかのメイドを呼び、自分たちの担当部屋を掃除させるのだ。とはいえ、憎めないところもある。牛追いのシーンでは、映画『シティ・スリッカーズ』を引き合いに出して、1匹の牛を食肉解体処理から救う。そういった行動の報いを受けることはないのかって?　この2人にそんな概念はない（もはや笑うしかないぐらいに）。無慈悲なホストたちからキツい仕打ちを受けることもあるが、彼女たちの方も負けじとやり返す。あるエピソードに登場する人物などは、知らないうちに敵視されて、ニコールからドッグ・フードのソーセージを出される。どこまでが“やらせ”なのかは、この際どうでもいいことだろう。『The Simple Life』は、ウソ臭いからこそ魅力的なのだ。では、シートベルトを締めて!（Donald Liebenson, Amazon.com）