まずストーリーに関して言えばこれで申し分ないと思う・・・というと怒り出す人がいるかもしれない。確かにその気持ちは分かる。パート2で生き残ったヒックス、ニュートが冒頭シーンであっさり殺されてしまった所は前作のファンなら怒るのは当然だろう。しかし、分かる人は分かるかもしれないが、このエイリアン3は度重なる脚本の変更があった。その変更されたいくつかの脚本の大まかなストーリーを読んでみたところ、如何にこのストーリーの出来が素晴らしいかということが分かった。変更された脚本の中にはヒックス、ニュート、ビショップがちゃんと生き残っているストーリーもあったが前作の焼き直しにしかなっておらず、しかも冷戦がストーリーに関わっている事から非常に古臭い印象を受けた。他にもヒックスやニューとはおろかリプリーさえも出てこず、新しいキャラクターが一人で活躍して終わる話などがあったがどれもこれもおもしろくなかった。それに比べると宗教色を濃くし、ダークかつスタイリッシュに仕上げた本ストーリーは実に見事である。
次に登場人物に関してだが「誰がいつ殺されてか覚えていない。」「誰が誰だか分からない。」などが酷評の要因として挙げられている場合が多いが、三十人もいれば分からなくなるのは当然である。そもそも三十人というのが多すぎる、と言う声もあるが刑務所なのだからそれくらいいても当然ではないかと思う。「誰が誰だか分からない。」等は最初の実体験においても書いたように何回か観ていく内に分かるようになるのである。それでも「分からない。」と言う人は全ての人物を見ようとしなくていいのである。主要の6,7人だけ見てれば宜しい。前作においてもヒックス達を主とした6,7人以外は全て死んでしまっているではないか。本作はただその他の人物が殺されるまでが遅いだけであり、その点に関しては前作と何等変わりがないと思う。
尚ラストについてはリプリー役のシガニー・ウィーバーが本作でシリーズを打ち切りにする事を条件に出演していたので仕方が無いと思う。しかし仮にその事がなかったにせよ、このラストはリプリーとエイリアンの絶対的な関係を象徴しているようで非常に素晴らしいと思う。
他にもとるべきところはたくさんある。後に後期バットマンシリーズの音楽を担当する事になるエリオット・ゴールデンサールの音楽も素晴らしいし、本作の後半にあるエイリアンの視点で囚人達を追うカメラワークも非常に良い。一作目はSFホラーの金字塔、二作目はSFアクションの金字塔、そして一作目のエイリアンの恐怖を交えながらダークかつスタイリッシュで非常な斬新な作品に仕上がった三作目(ついでにフランスの監督を招きグロテスクで恐ろしく、尚且つ悲しい母性愛を描きあらゆる面で芸術という域に達した四作目)、本作でのフィンチャー特有のダークかつスタイリッシュな映像美が後の映画に与えた影響は計り知れない。本当に素晴らしい作品である。どうしてこれほどの作品がこんなにも酷評を受けているのか不思議でならない。
しかし、その部分は別作品なんだと割り切って受け入れてもらいたい。
あらためて、エイリアン3という1本の作品だと考えてみてみると、
これはなかなか悪くない作品だとわかってくる。
独特の重苦しい雰囲気、映像ともにいい味を出している。
悪評だけにとらわれないでほしい。
ラストシーンでリプリーのおなかからエイリアンが飛び出してくるのが
暗い。
ハッピーエンドが主流のアメリカ映画にしては、ラストが暗すぎる。
やはり新人監督の起用は無理だったのではないかと思う。