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キリスト教の歴史 (講談社学術文庫)

価格: ¥945
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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合理主義の限界の中での真の信仰の模索 ★★★★★
 本書は1929年に生まれ日本基督教団補教師も務めた哲学博士が、大学でのキリスト教概説の講義をもとに刊行した本を、10年ほど後の1995年に文庫化したものである。著者は現代神学とキリスト教思想を専攻しており、そこでのスタンスを全キリスト教史の中で検証してみようとしたのが、本書執筆の動機であり方法であるという。そのスタンスとは、聖書はそれ自体として客観的に神の言葉であるわけではなく、あくまでも人間の主体性や責任を喚起するものとしての実存的真理であるということであり、またあくまでも宗教へのこだわりによって、現代の諸問題を乗り越える方法が模索されていることであろう。そのために著者は、それぞれの時代の一般思想の中でキリスト教思想を位置付ける方法を意図的に採用し、教会史・教理史・思想史の区分をあえて取り払って、ユダヤ教の成立から現代に至るまでのキリスト教の通史を、西欧教会を中心に(東方教会や日米の教会にも言及するが)、簡潔かつ平易に論じている。その際強調されることは、第一に近代以降の神が思考の前提から合理的な存在証明の対象となった点で、近代は基本的に無神論の時代であるということであり、第二に19世紀に噴出した反宗教思想が、キリスト教から不純な部分をふるい落とす面を持つにもかかわらず、カトリックが第二次世界大戦後までそれを頑なに認めなかったことへの批判であり、第三に近代的合理主義の限界を超克するために弁証法的神学が登場し、近代の二元論とは質的に別の水準にある絶対他者として神を見る方法を提示したことへの高い評価である。私はキリスト教徒ではないため、著者と基本的なスタンスがずれるが、著者の問題意識はよく理解できる。重要な教義の確定の時期が分かるのもありがたく、キリスト教史への入門書としてお勧めできる。
コンパクトなキリスト教思想史 ★★☆☆☆
 著者のポジションによる党派性を考慮に入れても、突っ込みどころがなくはない(たとえば三位一体の議論を「不毛」と断じたり、中世カトリシズムを「客観主義」でくくったり)。しかし、読みやすく、小部の教義史としては貴重。
すごい表題だとつくづく思わずにはいられない ★★★★☆
 タイトルだけを見れば、この手の本なんて腐るほどありそうなものだけれども、そして
事実、世界中に浜の真砂のごとく溢れているには違いないのだが、概説書としてこの程度の
分量で読めて、一応の範囲をコートして、水準もそれなりとなると、困ったことに、実は
なかなか見当たらない。2000年を積み重ね、なおかつ世界中に濃密に入り込んだこの宗教の
歴史をコンパクトに削り落とす作業の困難を思えば、それに着手すること自体が無謀といえば
無謀、ゆえに、それもまたやむを得ぬこと。そうして結果残るのは、日本語では実はこの本
くらいしかないのかもしれない。

 世界史の中にキリスト教を位置づけるこの試み、全編で250ページ、簡潔といえばあまりに
簡潔、それってどうなんだ、と疑問に思う箇所もないこともない。けれども、入門書としては
事実良書である、とは思う。
巨大な問題はこの程度の小著では・・・。ただし、近代部には魅力あり ★★★☆☆
欧米で出ている「キリスト教史」の本はとにかく大部。「教義」の歴史、「教会史」等々取り上げるべき対象は幅広く、しかも対象は2000年以上(イエス以前のユダヤ思想が不可欠である)。それを250頁の文庫で…というのはそもそも無謀な試みである。当然、個々の出来事の深層には迫れないから、「文章で記述した『年表』」に留まるだろうと予想した。

実際、中世までの記述は『年表』の域から大きく上回る成果は上がっていない。ただ、近代についての記述は一読の価値があると思う。その理由は、この部分では狭義のキリスト教史というより、広く知られた哲学者・文学者の著作の背後にあるキリスト教の姿を描くことに著者はその多くの読書と思索の蓄積をもとに、果敢なチャレンジを行っている。無論、これらを専門とする方には多くの不満が出ようが、愚生レベルの素人にはかなりの魅力がある。この点の魅力ゆえに、☆をややサービスした。

なお、著者の序文等に寄れば本書は複数の大学での長年の講義のためのノートが基礎になっているらしい。これは極めて失礼なことだが、講義の対象は「キリスト教」や「近代思想」を専攻する学生ではなさそう。実際の講義では本書の記述より、遥かに噛み砕き、多くの補足解説がなされたと想像する。「学術文庫」(といっても一般に読者への要求レベルは高くないが)では、この程度の小著でも結構なお値段になる。
それよりは、内容の大幅な増加は無理でも、一般に「選書」と呼ばれる叢書などに、「キリスト教を軸にした近代思想と近代文学」といった形での出版の方が、多くの読者を得られたかも…、と思うが、これは出版界の事情を知らない愚生の無責任な感想。妄言多謝。