「異国の花守り」というタイトルと、最初の方を読んだだけで結末の想像がついてしまい、事実その通りのハッピーエンドだったし。だたもう少し深いところまで読みたかった気がする。金沢に滞在する英国人青年アレックスの、日本的なものがどんどん失われていくことに対する思いとか、大学を出て就職がないので故郷に戻った雛子が、故郷に対して視点を新たに見つめなおしていく過程だとか、表面的描写に終わっている気がして少し残念だった。結局この二人は自分なりの人生の岐路を切り開くために何をしたのかな、という気がする。歳をとっても気骨を持って生きているやさしい大叔母さんのペースに巻き込まれて、なんとなく幸せになってしまった、という感がある。
自分も北陸の人間なので、金沢という町は福井のすぐ近所であり、さほどエキゾチックな場所ではない。しかし金沢には京都とは違う武家文化や、冬に嫌というほど降る雪に代表される厳しい自然にはぐくまれた特有の文化があり、古都を舞台に書くのなら、なぜ京都ではなく、金沢である必要があったか、金沢ならではの空気感をもう少し読みたかった。
波津先生の金沢に対する思い、そして日本文化に対する優しい
(敢えてそう言いたい)まなざしにあふれた作品です。
波津彬子の作品は、ドロドロしたものとは無縁な優しい作品が多いので、
おすすめです。
ストーリーは、金沢を舞台にした、一本の椿の木(それが花守の意味する
ところですが)を軸にした、主人公(日本人女性)と日本文化にあこがれて、
日本に住む英国人青年の恋愛もので、一話完結方式のシリーズです。