このシリーズは、帯に｢最高水準の印刷｣と謳われているだけあって発色が非常に鮮やかです。

ヤン・ファン・エイクの作品は細部に特徴があるので、このシリーズのなかでも、その印刷の威力が最も発揮されていると思います。私は美術館でいくつかの作品を見たことがあるのですが、ガラスが貼られていたり、照明が抑えられた場所に置かれていたりして、仔細に見るのが難しいコンディションに置かれているのがほとんどなので、あらためてこの本でじっくりと目にすることで新たな発見をすることさえあります。

解説も丁寧で、和書に限らずエイクの画集として最高水準にあると思います。

　ファン・エイクの絵画の楽しみは、画面の中に封じ込められたミクロコスモスを、じっと覗き込むことで様々な発見をすること。
　そしてそのミクロを覗いているときに、ふと視点を変えると、そのミクロの世界の積み重ねが、マクロの世界を創り上げている事に気づくこと。
　このミクロとマクロに気を配った図判の印刷はとても見やすく、ファン・エイクの筆致に迫っている。またトピックスを解説するためにちりばめられたファン・エイク以外の図版も的確で、背景等を理解する一助となっている。