教科書が教えてくれることや「権威」なるものが，必ずしも正しい歴史を語っている訳ではない！？でもやっぱり，日本人には「聖徳太子」が必要だ．．．この本が教えてくれるのは，ざくっと言えばこんなところである．

奈良には敗者の歴史が詰め込まれている．奈良自体が京都や東京（即ち国家権力）から見れば敗者だとも言える．淡々としかし綿々と脈々と歴史は紡がれ，隠されている真実が「俺の話を聞いてくれ」とばかりに，時折ふと顔を覗かせる．今までの学者とも権威とも有名作家とも違う独特の感性を持つ著者は，その歴史の叫びをキャッチ！「一言主神」よろしく，現代の我々にそのご託宣を解いて，説いてくれている．

言い当てて妙な「聖徳太子は実在しなかったかも知れない．しかし日本人には聖徳太子が必要だ」を是非実感していただき「関裕二一言主神ワールド」に酔いしれてもらいたい．著者渾身の一品である．