自炊をしているシーンが極端に少ないことも気になっていました。
買って食べたり(日本で言う中食)、TVディナーという冷凍食品を解凍して食べたり、台所に立たない理由がアメリカにおいて産業が発達していくにつれてコマーシャリズムによって作られていった事が本書で確かめられます。
もちろん、そのコマーシャリズムに対して自炊を推進している人たちもアメリカにはいます。その人たちの買い物の実態も書かれていてとても興味深いです。
日本における食生活が戦後コマーシャリズムによって大幅に変化していないかどうか本書を通して見ることができます。
たとえば「アメリカで進化する日本食」の章によれば、アメリカのスシはにぎりではなく巻物が中心であるという。その中身もアボカド、クリームチーズ、ソフトシェルクラブ、あぶったサーモンの皮と、実に多彩だ。もちろん「スシとはこういうものだ」という固定観念がなかったこともあるだろうが、著者は「何か人とは違うものが食べたい」というアメリカ人の嗜好がそうした巻物を生んだと指摘する。にぎりよりも巻物のほうが断然にオリジナリティを出しやすいからだ。
ほかにもベジタリアン、料理本、スーパーマーケット、ファーストフードなど、興味深い考察が並ぶ。