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ナレッジ・イネーブリング―知識創造企業への五つの実践

価格: ¥2,730
カテゴリ: 単行本
ブランド: 東洋経済新報社
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   名著『知識創造企業』の続編・実践編。ゲオルク・フォン・クロー、一條和生、野中郁次郎の3人が、豊富な事例をもとに知識創造企業実現のための具体策を提言している。洋書はすでに市場で高い評価を受け、全米出版協会から2000年度の「最優秀ビジネス書賞」を受賞している。

   よく「企業は人である」といわれる。それは、個人がもつ暗黙知が企業によって重要な価値の源泉となるからだろう。近年では、このような個人がもつ暗黙知に着目した「ナレッジ・マネジメント」の概念が定着し、多くの企業が暗黙知の共同化、表出化、連結化、内面化に取り組みはじめている。だが、現実にはナレッジ・オフィサーという役職をつくりだしただけで、旧来どおりのやり方をしていたり、逆に知識の創造を妨げたりしているケースも少なくないようだ。

   本書で提言される「ナレッジ・イネーブリング」は、このナレッジ・マネジメントの実状を打破しようとするものである。著者らは、知識を管理するのは基本的に不可能だとし、管理よりもむしろナレッジを生みだす環境づくりや機会の提供に重点を置いている。よって本書では、知識創造を妨げる要因について言及したうえで、知識創造を促進する「ナレッジ・イネーブラー」を十分な紙幅を割いて解説している。資生堂やGE、アセア・ブラウン・ボベリ、KPCB、ソニーなどの例を引き、「ナレッジビジョンの浸透」「会話のマネジメント」「ナレッジ・アクティビストの動員」「適切な知識の場作り」「ローカル・ナレッジのグローバル化」といった5つの「ナレッジ・イネーブラー」について解説した部分は特に注目に値する。経営学のみならず哲学や言語学、歴史など、さまざまな学問領域から知を借りて論を展開している点は興味深い。

   変化の激しい情報化社会で生き延びるのは、学習し続け、知識を創造し続けられる企業である。その点で、知識創造企業実現のための方策を示した本書は、マネジャーにとっても、社員にとっても意義のある1冊といえるだろう。(土井英司)

極論レビュー ★★★★★
「知識創造企業」の功績とは何か。革新的な企業(例えば3M)と革新的でない企業(例えば○○)とを比較した時、両者の組織構造が非常に似通っていることも多い。何処が革新的なのかさっぱり分からないという問題が発生した。しかし企業を丁寧に観察した時、超優良企業では必ず「知識創造」がなされていると野中氏は言う。氏はそれをSECI(セキ)モデル(共同化、表出化、連結化、内面化)としてフェーズ化した。これこそ「知識創造企業」の最大の功績と言って良いだろう。

見過ごされがちだが、SECIモデルにおいて非常に重要かつ実行が難しいのは、他人に伝わる形(表出化)にしたり、自ら体得(内面化)したりすることだ。しかし一條氏は「バリュー経営」で、これを乗り越える秘訣を提示している「相手の経験を尊重し、相手の個人的知識を尊重しながら、尊重的な相互関係を生み出す『ケア』の思想」がそれである。

「ケア」を体現するためにはどうすれば良いのか?勘の良い方はもうお分かりだろう。この本で述べられている五つのナレッジ・イネーブラー、これこそケア実践のための箴言なのである。

ちなみに本書には構造主義という言葉がよく登場する。だが、今からすぐ社会学を勉強しなければ!と鼻息を荒くする必要は無い。これは「人の知識は個性的なんだ。万人に通用する上手い知識の発現のさせ方なんかあるのか?」という疑問に、著者達が「ある」と答えているだけなのだ。子供の育て方は千差万別だが、「こういった育て方をしたら育つだろうなぁ」と感じることもある。実は同様に、知識表現のために誰もが心の底で欲しているにも拘らず、誰も表現できないものが存在する。そういったものを著者達が、はぁはぁぜぃぜぃ言いながら見つけ出したということなのだ。
最高に興奮させられる書物だった。読者はもう一度読みたくなる衝動に駆られるだう。

定義が曖昧でわかりずらい ★★☆☆☆
5つのイネブラーの具体例が分かりづらい。知識創造企業の時のようななるほどという事例ではない。ナレッジアクティビストやナレッジビジョンの例では、その担い手や定義が理解できない。アイデアを発散させ、試行錯誤を促進する仕掛けと、アイデアを収束させ、試行錯誤からブレイクスルーを生み出すための仕掛けを混同して議論しているような気がします。残念。