恐怖から目をそらすな!
★★★★★
新型インフルエンザH5N1、症状も結果も全くことなるこの病気に、誰もが一度は罹
患した経験がある『インフルエンザという』名前が付いていることが間違いのような気
がする。
発祥から48時間以内の死亡率100% (鳥の場合、人間の感染例の最悪例として、
インドネシアでの例では 患者135名中・死亡者110名 死亡率散る81%)
呼吸器、消化管は言うに及ばず、脳、全身に感染し、死に至る。
今この病気がの世界的発生は、”いつ”かという状況だといわれている。
本書はその病気について、歴史、メカニズム、対策などについて詳しく述べられている。
特に、日本においてはそれほど知られてい無い事実などが豊富で、このような深刻な事態を知りながら、なぜ日本はまだこんなにのんびりしているのだろうと思った。
少しでも発症を押さえるないしは症状を抑えるための数少ない対策についても、その有効性、使い方、長所短所についてまとまっており非常に良い本である。
一部、不安をあおるだけの、無用の書という意見もあるようだが、人間同士の感染経路が確保されれば、現在の人類にこの病気と闘う手段がないことが良くわかるのに、恐怖から目をそらしている人間のたわごとにしか聞こえない。
極めて正確な内容
★★★★★
2007年12月時点での国連、WHOおよび主要国保健当局の共通認識に忠実に準拠した内容となっています。また、分子機構の機序部分がやや複雑・詳細に書かれていることを除けば、おおむね初学者にも大体ついていけるくらいの簡潔かつ直感的に分かりやすい内容となっています。個人的には、クレードと株の異同に関する解説、M1蛋白阻害も含めた抗ウイルス剤の解説にはもっと踏み込んでも良かったのではないかと思いましたが、それがなくても自分の頭の整理には十分に役立ちました。良著です。
鳥インフルエンザの恐怖
★★★★☆
世間一般には「鳥インフルエンザ」と呼ばれる「H5N1型インフルエンザ」について
最近の世界各地で発生している感染事例などを含めて、このウイルスについて
全貌を解き明かすための研究結果とそこから導き出される結論として、私たちや
政府がすべき準備・行動について解説した書です。
未だに国内では、「インフルエンザ」と「風邪」が親戚であるかのごとく認識している
方も多く、更に同様に本書で言っているように「鳥インフルエンザ」が例年冬季に
流行する「インフルエンザ」と同類であるかのように扱われることには問題を
感じてしまいます。
この2種はインフルエンザウイルスという括りでは同類ですが、感染部位、症状などは
マスコミで触れられている「スペインかぜ」と同類で扱われている解説との乖離を
含め、広く明らかにすべき情報と思います。
以前より著者はこの分野について、研究の進展や世界情勢を考慮してタイミングよく
関連書籍を著していますが、本書は科学ライブラリーというジャンルから考えて、
科学的解説が広くされていますが、ウイルスなどになじみの無い人にとっては、
理解できない部分も多く含まれているように感じます。
ウイルスが持つ複雑な増殖、感染、発症システムを明解に説くことは非常に難しいとは
思いますが、そのような労力なしには世間で危機感を共有することは期待できないと
思います。
但し、反証も含めて科学的見地に基づいて持論を展開する、著者の姿勢は特に問題を
感じられず、「最悪の事態を考慮して準備を進めよ」という警告は経済的事情などで
ワクチンを備蓄できないなどの世界各地での格差問題などを含めて一考に価すると
思います。
ことさらに大惨事を煽る人。
★☆☆☆☆
本書の著者、岡田晴恵氏はユーミンのアルバム(新曲か?)よろしく、年末になるとこの手の本を著してはインフルエンザはコワイだの人類滅亡説(大袈裟か)を唱えては経済的、社会的に甚大な被害が及ぶと警告している。
映画、「アウトブレイク」のように本当にインフルエンザが突然に変異して猛烈な増殖を繰り返すというパンデミック(全人類に猛威を振るう)が起きるのだろうか?(ちなみに一部地域や散発的に起きる流行をエピデミックという)
感染者6億人、死者4000〜5000万人をだしたスペイン風邪(インフルエンザ)が猛威を振るったのは1918年〜1919年の一世紀近くも昔のことである。また永久凍土から温暖化の影響で封じ込められたウィルスが出現したとしても今の医療技術とそのころの医療体制や技術などとは比べ物にならないし、対症療法の技術にしても格段に進んでいる。
一番いけないのは、映画「アウトブレイク」でもそうだったが、初期対応に問題があったということだ。
おそらく殆どの日本人は「風邪」と「インフルエンザ」の違いを理解していないだろう。知識ではわかっていても実際に自分自身のなかで起る体調変化にこれは「風邪」これは「インフルエンザ」と見分けがつかないだろうと思う。
見分け方は「急激な症状の悪化」と「全身症状」だ。これだけを意識しているだけで他人への感染を多少は防ぐことができる。また無闇に人混みへ近付かないことも肝要だ。
「北が攻めてくる」とひたすら国防の必要性を説く輩がいるが、同じように詭弁に聞こえてくるほどにことさら大惨事を煽るといまにオオカミ少年になりかねない。
サイエンスから導かれる事実とは
★★★☆☆
岡田氏の最近の恐怖心を煽る著作と比べると科学的証拠に基づく記述ではあるように思う。岡田氏は何の研究が専門なのかPubMedでサーチしてみたがインフルエンザでは引っかからないようだ。上司である田代氏は確かに多くの英文論文がありメディア等にもWHOの会議の場面等で露出している。
国研の研究者が沢山の著作を残す事に異議を唱えることはしないが、ご自身の研究成果に基づいているのか?あるいは現状分析を網羅的に語っているのか幾つかが疑問がある。特に田代氏はワクチン関連の論文にも名前を幾つか連ねているようだが、本書の中では、将来有望と思われるご自身が所属する研究所から発表された経鼻粘膜ワクチンの有効性にはなんら言及していない(御自身も連名で著者)。なにか理由があるのだろうか?多くの国民は単なる怖さだけを読み取るのでなく、少しでも科学研究の成果から明るい未来を期待したいのではないか。
説得力を持たせるためには多くの参照文献を提示され、そこから考察される事を過不足無く羅列することが科学者の著作には求められるのではないだろうか。