壮麗で壮絶な宇宙
★★★★☆
掲載されている美しい写真の数々は本当に溜め息が出るほど荘厳。多くの貴重な写真に映された宇宙の神秘的で荘厳な輝きはまさに神々の世界。そこに文句は無し。
ただ、本の構成上ある程度は仕方ないと思うけど、どうしても写真を多く掲載するために、その分、写真の載っているページと実際の解説文がズレている事が多く(誤載という意味ではない)、「図1に見られる青白い光の放射は〜」といった解説を写真を見ながら読もうとすると、その都度ページを捲ったり戻ったりする必要があり、そういう意味でちょっと読みにくい点が残念。贅沢な注文かもしれないが、写真と解説のレイアウトには徹底的に気を使って欲しかった。
まさに神秘の極地〜これからもハッブル打上げを
★★★★★
「ハッブル望遠鏡」シリーズ第三作。初の打上げから10年を経て、増々鮮明になった画像には驚くばかり。シリーズを通しての野本氏の宇宙への情熱にも打たれる。
「神秘的な美しさ」とか「まるで宝石のよう」とか言うと陳腐な形容のようだが、もうそれ以上の言葉は浮かばずタメ息が出るばかり。冒頭に出て来る「猫の目」星雲は言い得て妙。本書では銀河と銀河が衝突して出来た渦巻銀河の画像が多い。ケンタウルスの渦巻銀河は台風の眼の様。しし座の渦巻運河はクラゲの様。りょうけん座の渦巻運河は人体内部の様。この他、環状銀河の代表として、中央に黄色い星を持つへび座のリング銀河。大マゼラン雲の壮麗さ(特に「幽霊の頭」は圧巻)。橙のアメーバを思わせるうさぎ座の惑星状星雲。極彩色の蟻が衝突しているように見える「アリ」星雲。真珠を散りばめたような球状星団オメガ。「ステファンの五つ子」と呼ばれるペガスス座の小銀河団。広い視野で映し出すためHDF(Hubble Deep Field)と呼ばれる手法で撮られた煌く無数の星の競演。イチゴのような"いて座"のハッブルX。イワシが二匹並んだような"いて座"の原始惑星状星雲「ゴメツのハンバーガー」。卵に串が刺さったような白鳥座の「エッグ星雲」。まさに真珠のネックレスにしか見えない超新星1987A。切りがない。
野本氏の科学的な解説にも係らず、この美しさと多様性は天の配剤としか思えない。本書では太陽系の惑星の画像も載せている。地球の兄弟星、火星の姿が地図付きで詳細に説明される。木星のオーロラの像も神秘的。土星も複数の画像で丹念に説明される。海王星の像も珍しい。
著者はNASAの計画変更で、ハッブル打上げ中止を心配しているが、幸いな事に計画は続くようである。これからも我々に夢とロマンを与え続けて欲しい。
『なんじゃこりゃ〜。』(○田優○も、きっとビッくり)
★★★★★
天文学という自然科学の一分野は、子供にとっても、また大人にとっても、ロマンや美しさ、未知の対象を求める知的興奮を与えてくれる分野の一つではないだろうか。
最近の10年間で、天文学のグラフィカルな観測技術は、爆発的に進歩した。特にCCDカメラ、コンピュータとソフトウェアが、その担い手であった。(もはや水素増感2415ではないのだ…)これらを引っさげて、宇宙空間に飛び出した望遠鏡が、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HSTと略)という名の人工衛星である。
本書は、2004年より宇宙開発委員会で委員も務める野本陽代女史が、NASA宇宙望遠鏡科学研究所によって『ハッブル・ヘリテッジ・シリーズ』と題された、ド肝を抜くHSTの写真を中心に、他も含めて約120点をピックアップし、解説を加えたものである。どちらかといえば、本書は論述の「スジ」を追いかける類の書物ではなく、写真を楽しみ、解説で理解を深め、それをもとに再び写真を楽しむといったタイプの書物である。
本書の美点は、数々の美しい写真もさることながら、解説の的確なことだろう。天文写真を中心に据えた一般書は、どういうわけか、その写真の審美的側面を出しすぎて、かえって薄い味わいになりがちだが、本書はそれらと異なる。思うに、良い解説という手引きがあってこそ、とてつもなくダイナミックな現象への理解の扉が開かれるのであって、むつかしさに配慮しすぎて割愛すると、扉が閉まりかけるのかもしれない。
解説を味わいながら、再び写真を見ると、宇宙におけるさまざまな現象は、とんでもなくスケールが大きいが、「折り目正しい」と言いたくなるほど、パキパキの合理性が見え隠れする。この点少しばかり「脳トレ」的楽しみも味わえるかもしれない。
ともかく、つべこべ言わずに、太鼓判。(他、HSTが見た宇宙シリーズも推薦)
ハッブル望遠鏡がとらえる宇宙の姿は壮麗
★★★★★
野本陽代氏の手による惑星や恒星、星雲や銀河などの天体写真に関する本は個人的には愛読書であり繰り返し読み返したりあるいは天体写真を吟味するように見たりもしますが、この本もまたハッブル・ヘリテッジ・シリーズの写真を中心に紹介されているだけに読み応えがありました。
本書はハッブル望遠鏡シリーズの3冊目でありますが、シリーズを通してみるとハッブル望遠鏡の性能の向上はもちろんの事、画像処理技術の進歩も壮麗な天体写真から感じられました。そうした事からも本書に掲載されている天体写真は過去に出された2冊以上に鮮明で美しいものであると思います。
先にレビューを書かれた方々も指摘しているように、ハッブル望遠鏡の存続が危ぶまれているという事には残念というよりもどういう事だと言いたいくらいです。宇宙科学・天文学の分野では現在電波や赤外線、X線などを使った観測がされており、そのための観測衛星や施設が幾つも存在しますが、可視光による宇宙観測では地上のすばる望遠鏡と並んで双璧とも言えるハッブル望遠鏡を亡くす事は人類にとっても大変惜しい事に思われます。ハッブル・ヘリテッジ・シリーズといういわゆる人類にとって後世にまで伝えていく貴重な遺産を提供している望遠鏡だけに、亡くす事なく存続させていく事を望みます。
魅惑の星々
★★★★★
このシーリーは本書で3冊目となります。
今回は、ハッブル・ヘリテッジ・シリーズの写真を中心に載せていることなどもあり、前回にも増して美しい写真が掲載されています。
写真を見るだけでも十分に価値のある1冊です。
これら美しい写真を撮影した、ハッブル望遠鏡の存続が危ぶまれているとのことです。
このような魅惑的な写真を映し出すハッブル望遠鏡を是非とも存続させ、シリーズ第4弾、5弾と刊行してもらいたいものです。