野本陽代氏は過去にも岩波新書等にてハッブル宇宙望遠鏡に関する本をいくつか出されており、その一連のハッブル望遠鏡限定で最も新しい本にあたる「ハッブル望遠鏡の宇宙遺産」が世に出たのは今から5年程前となりますので、この本ではその後の5年間における観測成果というものが紹介されています。
本書のように新書というサイズでの銀河や星雲、恒星に惑星等の天体の秀麗な写真を見る事が出来る書籍はお手頃な事もあって重宝していますが、最新の観測成果も掲載されているだけあって過去に出たハッブル望遠鏡の関連書籍と合わせて見ればそれまで知らなかったものが一歩一歩身近なものになっていくという事が実感されました。
本書でも取り上げられていますが、2009年の5月にハッブル望遠鏡に対する5回目のサービスミッションが実施されて故障乃至は劣化した装置の修理や最新の装置への交換がなされて満身創痍の状態から蘇ったとの事ですが、2002年に4回目のサービスミッションが実施された後のスペースシャトル・コロンビア号の事故やNASAの予算難等によってサービスミッションが中止されハッブルは存続の危機に立たされていたとの事です。しかしながらハッブルによる数多くの美しい天体写真に魅了された世界中の人々の訴えにより延命が図られ、新たに取り付けられた最新の観測機器を駆使して宇宙の新たな情報を提供してくれるそうです。
来年でハッブル望遠鏡が打ち上げられてちょうど20年という節目の年になりますが、ハッブル以降の次世代宇宙望遠鏡がどのような形で実現されるかを含めて宇宙空間における宇宙観測がどう展開するのか見逃せないものがあると思われます。

野本さんの岩波新書での一連のシリーズの講談社版です。
最新の知見に基づいて、ハッブル望遠鏡の成果を述べています。
非常に平易な解説で、中学生くらいから楽しめる内容になっていると思います。
ハッブルの撮影した画像も、新書ながらきれいに再現されています。