健さんは義理に忠実だったのか
★★★★★
止めはしない・・でも次は私の義理にだけ生きて・・と死地にむかう高倉健に縋る藤純子。
断固意地に死す行為への羨望とあきらめきれない惚れた男への愛着を、匂うほどの艶かしさで演じた藤純子の演技が際立った残侠伝です。恥ずかしながらこのシーンは何度見ても思わず貰い泣きをしてしまいます。
でも健さんは殴りこみから生還してしまいます。
残侠伝シリーズでたった一本、居心地の悪さを感じるラスト・シーンです。
惚れた女への義理だけで生きていく秀次郎は惚れた女にとって何の魅力があるのでしょうか。
藤純子が本当に望んだのは健さんの生還ではなく義理に死す秀次郎ではなかったのか「死んで貰います」は藤純子のセリフではなかったのかと35年間疑問に思っています。
この映画の公開は大阪万博の開催、三島由紀夫が割腹、学生運動が終息した年でした。
この時代背景とともにオトコの論理が崩壊し日本人の義理が国際化の激流に埋没し始めて
仁侠映画の終焉を予感させる名画でした。