アヴァンギャルドがエンターテイメントとなぜ異なるのか、純文学がなぜ大衆文学と異なるのかということを明確に書いている。芸術と芸能が異なることを上下でしか語れない日本の中で、村上はその違いをひと言で書くことができる。
村上龍の直球指南は小気味がいい。しかもあっている。たとえばこういうことも言う。
どんな国家でも近代化より大きな国家目標はないはずだ。日本は、近代化が終わっている。それをきちんと認識しておかないと子供たちにはフェアではないと私は思う。国家的な目標でなく、個人の目的が大切になるわけだから、いい大学やいい会社に入るだけでは個人のプライドを支えることができないということを言ってあげれば子ども達はだいぶ楽に生きられるのではないだろうか。と、確かにそうだ。自分たちのポジションを自覚できずに、若い子たちに期待を込めて古い制度や考えで対するからいろいろな齟齬が起きるのだ。
真っ赤なカバーと『自殺よりはsex』というタイトルは売るための戦略だろうが、なかなか洒落ている。援交のことや若い男のこのsexについて書かれているが、むしろ真面目な感じで納得することが多い。青春出版社の人生相談のパターンに近いが、それでも論の切れ味は一読に値する。
面白いのは映画を撮ったりするときに新人の女優に惚れちゃうとこで、この子は凄い才能を褒めるのだが……結果、そうはならない。これだけ評論的洞察力があるのに、何でアーティストに対する目がないんだろうと不思議だ。もしかして村上龍、評論の方に才があるのかもしれない。最近の小説、調査小説のようなところがあって、あっているんだけどどこかリアリティに欠けているものが多い。この本からはそんな村上龍の裏事情まで読み解けるぞ。面白い。必読!
男の視点かもしれないけど女の私にもいい薬になった。
この本一冊で立ち直ったわけじゃないし、
この本にあること実践したわけじゃなしけど。
村上龍の世界、彼の価値観、そうかもしれないけど、そこまで私にできないわ・・
なんて考えたり頭の中で本に突っ込んでみたりして。
すこしの間だけ自分の心の痛みを忘れた。
そんな少しの間がだんだん長くなることが日常なのかもね。