たしかに「イーラーンの歴史」を扱った新書ではありますが、タイトルにあるような『物語・イランの歴史』といった内容を期待された方は失望されるかも知れません。本書は決してイーラーン民族の歴史を物語風に興味深く記述した本ではないからです。例えば、古代アカイメネース朝ペルシアから一躍サーサーン朝ペルシアに話が飛び移り、かつて広大な版図を誇ったイーラーン系の王国パルティアーに関しては殆ど何も触れずに済ませてしまう等といった点は、どうしても疑問と言わざるを得ないからです。
ただし、近代以降のイーラーン史、とりわけ西欧帝国主義勢力による世界侵略の時代からホメイニー革命以降現在に至る迄の近現代史に関しては、比較的詳細に語られているので、色々と参考になることがあります。先ずは買っても御損の無い一冊だとは思いますが、上記の偏向があるという事だけは知ってからになさって下さいね。