ブランドを取り巻くコンテクスト(文脈)に着目したブランディングの実践モデルを紹介している。「ブランド・アイデンティティとブランド・イメージ、そして両者をつなぐコミュニケーションを一貫した切り口でとらえる理論と実践方法が、これまでのブランド論にはなかったのではないか…」という、著者の問題意識から生まれた1冊だ。
そのコンテクストの切り口は、従来のブランディングの課題をさまざまな形で解決している。たとえば、ブランドは目に見えず、つかみどころのない特殊性をもつが、それをコンテクストで表現して可視化し、扱えるものとして構造化している。特に「意識の深層にあって表現しにくい暗黙的な」ブランド知識にまで分け入り、コンテクストによる連想ネットワークのモデルで顕在化している点は画期的だ。
また、顧客へのメッセージにコンテクストを計画的に組み込むことで、企業と顧客間で価値観や経験を共有する戦略シナリオを提示。企業のブランド・アイデンティティーと顧客のイメージ、それらを結ぶコミュニケーションの3領域における「コンテクストの共有」の戦略やコミュニケーション・モデルは、企業と顧客の間に生じる溝を埋めるものになる。
こうした理論をベースに、ブランドの創造プロセスや、ニチレイの「アセロラドリンク」のブランディング事例、3領域の実践プロセス、ブランド・パーソナリティーの構造化などを展開している。ブランド価値の源泉や、顧客とのコミュニケーションを見直すうえで必見の理論書である。(棚上 勉)
固定客化促進の戦略としては意味があるが、ブランド戦略としては・・・
★★☆☆☆
ブランドを開発し市場展開したさい、必ずしも企業の意図したように顧客を方向付けることがむずかしい。それは、企業側で開発するブランドアイデンティティと顧客側で形成されるブランドイメージとの乖離として現れる。この乖離を極小化しよう、というのが、本書のコンテクストブランディングである。その論拠は、企業と顧客とのあいだでコミュニケーションを促進することに求める点にある。
具体的には、既存ブランドの知識を、それにかかわるあらゆる主体(企業・顧客・関係者)から拾い上げ、そのブランドの全体像と連想イメージを構築し、訴求点を選定する。場合によっては、製品開発につなげることも考える。その後、顧客とのイメージ乖離が生じないようにコミュニケーション戦略を構築し、最終的にその戦略の検証を行うことを提示している。
本書で提示される最も重要な点は、恐らく、このコミュニケーション戦略の綿密なデザイン、という点に求められるだろう!詳細は本書を参照されたい。
若干のコメント
本書の手法を用いれば、恐らく、消費者の固定客化を促進することが可能であろう。例えば、ヘビーユーザーが育っていない場合は、この手法によってその割合を増やすことができるかもしれない。しかし、ブランド論としてもう一つ重要な、消費者を引き付ける、という側面にかかわる対策を打ち出せてない。それは、ブランドイメージの醸成・豊富化にかかわる問題、コンセプト・意味形成の問題、市場ポジショニングの問題などにほとんど触れていないためである。
ブランドにかかわる戦略は、これらの点に言及して初めて有意なものを導けるのではないか、と考える。
ブランド構造を明らかにする
★★★★★
本書は“ブランド”という曖昧模糊な概念を、それに関わる人々の「連想の文脈」から明瞭にひも解いていくことに成功している。
「あっなるほど。ブランドってこうなっているのか」
と、思わず納得、腑に落ちる説明だ。
たとえば、そのブランドの強みとは何か?何が連想され、何が連想されていないか。
消費者のそのブランドに対する知識量と、異なる要素を関連づける文脈、その深さこそが、そのブランドの実態だ。この知識構造を明らかにすることによって、そのブランドの弱点を見出し、対策を打つことができる。
そのための方法論が本書である。
ブランディングに携わる人必携の本。
ブランド本としては、現在のところ最高!?
★★★★★
簡単に書きますが、
日本国内のプロダクトに関する事例なので頭に入りやすい。
皆さん、体系的に理解できても、いざ実践となると難しかったりしますよね。
アーカーやケラーなどのブランド本は、事例が海外だったりするので、
頭で理解できても、体では感じにくい。
その点、この本はお勧めです。
ブランド構築の指針となる書
★★★★★
ブランドに関する本は数ありますが、「ブランド連想」に焦点を当て、
いかに構築するかここまで理論的に説明して、
実例(ニチレイのアセロラ)を元に解説したものはないのではないでしょうか。
本書はコンテクスト(文脈)と言う、顧客や自社の中にある知識やイメージを
いかに結びつけて、強いブランドを構築させていくかを分かりやすく説明しています。
分かりやすくと言っても、基本的なブランドの構造が頭に入っている方が理解は進みます。
コンテクストブランディングの考え方、
そしてニチレイアセロラドリンクでの事例を通じての
具体的な進め方、プロセスの紹介。
その核となるブランドアイデンティティの構築方法、
一方で顧客の頭の中にあるブランドイメージを把握するための考察手法。
これらの分析を元にしたブランドコミュニケーションの在り方など。
実際、自身もコンサルティングをする上で非常に参考になりました。
考え方や実践方法自体は素晴らしいですが、実際に行なうには大変な負荷が想定され
推進体制などについても説明があるとよかったです。
ブランディングに関わる方はもちろん、
商品企画やプロモーションに関わる方にもおススメです。
これはすごい
★★★★★
このブランディング理論はすげぇ。
更に踏み込めば、コンテクストを創出する過程で、
広告・SP・PR・イベントなどの役割分担が相当明確になります。
それぞれの得意分野で文脈を形成すればいい。
コミュニケーション従事者必読の一冊でしょう。