相変わらず高い問題意識に脱帽
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本書の狙いを「一見学問の到達点のように見える事柄について...出来上がっているのか、まだそこまでは至っていないのかを、一人一人が自ら会得してほしい」としています。これが若い頃から注目され、長年考古学界を引っ張ってきた高名な考古学者の言葉とは!著者の問題意識の高さに改めて脱帽です。
「「暦」はどのように使われたか」や「「大化」は最初の元号か」など、古代史にも強い著者の指摘には相変わらず勉強をさせられます。改めて言うまでも無く、考古学と古代史は車の両輪のようなものですから、森浩一さんの双方に対する深い洞察力と実地経験が多くの人を納得させるのも頷けます。森さんの本を初めて読んだのは40年前くらいですが、森さんの問題意識の高さにビックリしたのを覚えています。
本書を読むと、当たり前だと思っていたことが実はそうではないということを改めて感じました。「古代史についてのまとまった発言は、多分この書物で終わりになるだろう」という本書を、考古学や古代史に興味のある方に是非読んで欲しいと思います。勿論ある程度勉強した方が対象です。ところで、今年80歳になる(なった?)森さんには、「この書物で終わり」とせず今後も私たちの目を覚まさせて欲しいものです。