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消えた横浜娼婦たち 港のマリーの時代を巡って

価格: ¥1,785
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: データ・ハウス
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東京からもっとも近い異境 ★★★★★
「東京からもっとも近い異境」という切り口で、横浜の成立から現在に至る歴史が娼婦の立場から語られる。
とはいえ横浜のことを全く知らなくても、フツーに読めると思う。
逆に知らない方が、ぐいぐい引き込まれるのではないだろうか。

わざわざ敷石をはがすような労力で書き抜かれてはいるし、内容もおもしろいのだが、決して感想が書きやすい本ではない(文章が読みづらいという意味ではなくて、レビューを書きづらいという意味。思わずレビューしたくなる内容だが、まとめづらい)。
有名なメリーさんとメリケンお浜という戦前の娼婦の二人を中心に据えているが、各章ごとのカラーが比較的はっきり分かれているので、一冊丸ごと総括するのがむずかしい。ぽろぽろとトリビア的な話題やギャング映画的なネタも出てくるのだが、これは「娼婦がいた時代」の断面を伝えたかったということだろうか。

娼婦をテーマにした本ではあるが、過度な感傷に陥ることも社会を批判することもない。かなり抑制をきかせた文体で歴史が紡がれていく。
気のせいかもしれないが、著者は伝説の娼婦たちに対して少々崇拝心があるかのようにも感じた。歴史的事実の探求や細部のリアリズムに徹しているにも関わらず、どことなく神話的。そのバランスの妙が不思議である。
書き手は比較的若い世代なのだろうか。

読後、あらためて本の舞台に足を運びたくなった。

蛇足だが、民衆から見た都市の裏街道的な歴史を書くのであれば、最近出版された平井 玄の「愛と憎しみの新宿 半径一キロの日本近代史」のようなタイトルが良かったのでは。内容に比してタイトルが安っぽいと思う。
ただし人によっては、メリーさんについて書いた本だということが分かりやすいので、このタイトルを支持するかもしれない。
写真のセレクトと着眼点のユニークさ ★★★★★
 路地探索や昭和の裏話といったテーマに興味を持っていたので購入した。ざっとページをめくって目に付いたのが、数々の写真。横浜港に出没したという海賊や密輸業者、船乗りの現地妻などを取りあげた「ヨコハマ・ノワール」の章と、都市伝説として有名な「白塗りメリー」の章の写真は、はじめて目にするものが多い。とくにメリーさんの写真は、森日出夫氏の撮影した物はよく目にするが、本書の中には森氏の作品は一枚もなく、初見の物ばかりだ。これだけでも手にする価値があると思う。
 テキストにも努力の跡がうかがえる。メリーさんを取りあげたドキュメント映画として知られる「ヨコハマメリー」より一歩も二歩も進んだ取材は、予想外の収穫だ。ただ賛否両論分かれるかもしれない。
 横浜という港町の歴史を、娼婦をとっかかりにしながら、あたらしい視点で描いている点は評価できる。タイトルだけ見ると「娼婦の話を扱ったB級本」みたいだが、実際は街の移り変わりを日陰から描いた一種の通史で、かなり読み応えがある。著者が描くのは「光も影もはらんだ異国情緒溢れる街」から「薄っぺらい観光地」へと横浜が転落していく経緯だ。2005年の黄金町壊滅で、「特別な場所」をすべて失った横浜。街にはある種の物語が必要だが、ロマンが失われて久しい街を素材に、「港」という色あせた物語の解体と大胆な書き換えを行った力作。資料価値が高い一冊だと思う。
歴史の暴露本というだけでなく ★★★★★
お浜さん、メリーさん…
開港150年の横浜のダークな歴史のナイーブな面。

同著者のヴードゥー大全もしかり。
詳しい情報の提供で終結というだけでなく、
文化の余韻…哀愁。そして面白い。
厳しくも優しい眼差し ★★★★☆
開港百周年ということで、横浜がらみの企画は多々あろうが、これは異色の一冊ではないだろうか。

娼婦、特に外人相手の女たちをめぐる文化風土に目を向ける著者は、それに代表される「いかにも横浜らしい異国情緒」が次第に失われていく過程を、むやみな感傷に浸ることなく静かに追っていく。
時には著者は「横浜が外国に一番近い街といわれたのは昔のこと」、今の横浜は「ノスタルジックな残骸」であると、なかなか手厳しい指摘もする。このあたりも娼婦という題材と合わせて、レビュワーがこの本を「異色」と感じる要因の一つである。

しかしこの本は同時に、やはり百周年という横浜のお祭りにふさわしいものではあるな、とも思う。華やかに生きながら身を売る女たち、キャンプの米兵、船乗りたち、ホテル、酒場、ジャズ、といったハマの猥雑な空気を活写する著者の眼差しは、冷静で厳しくもありつつ、優しいのである。
特にそれは、老娼婦であり都市伝説にもなった「メリーさん」もすでにいなくなった現在の横浜に筆が及ぶあたりで顕著になる。警察の浄化作戦でもぬけの空になった黄金町のチョンの間街。その寂しさと、ほんの少し垣間見える未来への展望。

頭から通して読めば、舞台の裏側から横浜の百年を見た気持ちになり、読了してその未来について思いが及ぶ。様々な写真もあいまって、充実した読書時間をもたらしてくれる一冊である。