長く人気の街、横浜。世間でよく取り上げられる場所や店も人気の理由として間違いないんですが、簡単に触れられる以外のものが醸し出す、街の雰囲気、ひとと歴史の蓄積が、横浜の顔を作っているに違いないのでは、と思います。戦後から今に至るまで続くちょっと悪くて、お洒落な横浜の見えにくい表情がリアルな聞き書きで綴られるこの本は、横浜の深さをあらためて感じることのできる一冊です。

この本にも出ている｢有隣堂」では直木賞作品でもここまでの待遇は…というほどに、発刊からずっと山積み状態。
これは横浜限定の状況なのか。

この本に出てくるあそこもここも、普段に普通に歩く町だから面白いのか、それともハマっ子以外が読んでも面白いのか…

少なくとも、コーちゃん(語りべの松葉好市さん)と同世代の方ならば、ハマっ子でなくとも、自身と比較しながらあの時代を反芻する面白さがあると思われます。

ものごころついた時には、もうこの横濱物語の｢横濱」は片鱗すらなく「横浜」であり、そして「ヨコハマ」の時代へ突入。
そんな横浜しか知らない私ら世代には、「へぇへぇ」の連続です。

故あって今は他所にお住まいの元横浜市民にもお読み願いたい。
かつて不良で鳴らしたコーちゃんじいさんが語る横濱を聞きながら(これがまたホントに頁の間から聞こえてくるかのような文章なんだ)、時に一緒にアツくなったり、しみじみしたり、驚いたりいたしましょう。
ディスカバーヨコハマ。