経営やマーケティングといった社会科学分野において、自然科学のような唯一不変の法則は存在しません。
また、実証主義が基本のため後追いの理論となります。ようは、消費者の行動の実態がまず先にあり、それはなぜそのような行動をするのかといった理由(理論)をあとから考えるというやり方。
気をつけなければならないのは、本書に書いてある各理論は、その理論が発表された各時代において「正しい(だろう)」と認められた理論であり、今の時代にはあてはまらないかもしれないし、例え最新の理論であったとしても「絶対に正しい法則」ではないという点。
それに本書の中で多くの理論が紹介されていますが、その中の一つだけを取り上げて実践したとしてもたぶんダメで、実際には本書で紹介されている全ての理論を当てはめたような超複雑な理論を実践しないとダメなんだと思います。
ただそれは現実的ではありません。現実的には、この本の内容をしっかり頭に入れたうえで、自分なりの「解釈」をし、消費者の行動を自分なりに「読む」ことが必要になるのだと思います。
そしてそういった「解釈」をするにも一定の理論や知識がないとダメだし、「読み」の精度を上げるためにもやはり必要です。筆者自信も言っているように、本書の内容はあくまで理論・型(フレームワーク)であり、自分自身の置かれた状況に応じてカスタマイズする必要があります。
前ふりが長くりましたが、上記のような点に気をつけつつ読むのであれば、良い本だと思います。この手の本にありがちなマニアックな理論説明に陥ること無く、わかりやすい表現で網羅的に書かれています。比較的古い(?)ベーシックな理論から、新しい考え方という順番・構成で書かれているのも読みやすい理由の一つと思います。