偏りに注意
★★★★☆
アメリカの特殊部隊の支援部隊の歴史を聞き書きに基づく
エピソード中心に辿った本。
題材となっている部隊は、特殊部隊が実際に活動するのに
必要な情報を集めることを任務としている部隊である。
本書がでるまでは、ほとんどその存在を知られていなかったとの
ことだが、それは厳重に秘密にされていたからというよりは、
軍内部ですら日陰者扱いされていたからと思える。
日陰者扱いされていた存在が、サダム・フセイン捕縛
という功績をあげたために堂々と表に出てきた感じ。
なぜか、イギリス人が書いているんだが、こういう本が出てきた
背景には、多分、米軍内部での権力関係の変化がある。
まあ、そんなことはどうでもいいが、気をつけなければいけないのは、
著者が徹底して現場の視点から物を見ていること。
本書は、あの作戦もこの作戦も軍中央や政治家が、さっさと決断して
武力行使していれば、上手くいったのにという調子で書かれている。
特殊部隊の関与が検討されるような問題は、政治的問題が主、
軍事的問題が従であることが多く、武力行使で解決できることは、
そう多くない。
それは、最大の功績として描かれているサダム・フセイン捕縛後の
イラクの状況を見ても明らかだろう。
ところが、この本の著者は、ジャーナリストでありながら、
そういうことは何も考えていない。
だから、読み手の方がよく考えなければならない。
この本は、批判的に読まれなければならない本だと思う。
面白いです
★★★★★
読み応えがあります。一度読んで、もう一回読みました。
良本だが副読本必須、というか知らないと星2.5くらいにしか……
★★★★☆
1970年代特殊作戦で大失敗したアメリカ軍が反省してまた新たに作られた諜報組織、『情報支援隊(ISA)』のお話。 ぶっちゃけて言うとCIAみたいな諜報機関と軍の特殊部隊を足したような組織。「軍事作戦の『前』に短期集中で潜り込み、作戦の準備をする」ための部隊。
基本的にどういう作戦にかかわり、どういう働きをして、どうなったかをさらっと書いてあるだけなんだが、話が話だけにいろいろボカシているところも多い。 その上CIAが邪魔したとか情報を隠して協力しないとか、軍上層部で作戦立案したのに握りつぶされたとか、愚痴っぽい話が多い。 まぁ、所々見覚えのある名前が出てきたりするのが業界の狭さかな?
ただこの本、単体で読んでもそれないに面白いが副読本があればなお面白い。
1980年 4月 イーグルクロー作戦から2003年 イラク戦までの期間、戦術情報収集にいろいろ出張ってます。いくつかの作戦の話を読んだり聞いたりしたことがあるなら別視点でのドラマというようで非常に面白い。
またSEALSやデルタフォース、SAS等の特殊部隊の話で抜けていた時期がこの本で埋められたりするのでそっちの興味がある人もお勧め。
で、アメリカ諜報組織多すぎ! CIAだのFBIだの、NSAだの微妙の守備範囲がかぶってる所では喧嘩するし、組織のために得た情報だからって別の組織に流すのを渋るし、と読み進めてユーゴ空爆やアフガン辺りで気がついた。
こいつら(ISA)すげぇ強引だ。 これは嫌われる。
考えてみれば当たり前なんだが他の組織は事件の後も残っているんだから、こいつ等みたいに「今、正確で十分な情報が取れれば後は組織が壊滅状態でもかまわない」って訳にもいかないんだな。 そこに強引に割り込めば迷惑だし、地域のスパイも動きにくいだろう。
それにもう一つ。 こいつらは有能だけど、あくまで『戦術レベルでの諜報』に特化してる。 だから戦略レベルでのインテリジェンスでミスがあると間違った情報と間違った指針で動くことになる。 だから最終章で扱われたイラク戦で「上に『大量破壊兵器』見つけて来い」といわれても見つけることができない。 無い物は探しても見つからないからな。 別の本でイラク戦の戦略レベルでのインテリジェンスや作戦の推移を知っていると、「こんなに苦労しているのにほぼ無駄手間なのか……」と感慨深い。
後この本読むと何であんなにラムズフェルド長官やブッシュ大統領がガチ保守、ネオコンだったのか判る気がしてくる。
ミスると痛いけど予防戦争でうまくいけばダメージ軽いからね。 イラクではミスったけど。
やっぱりこの本は別の本とクロスチェックや別視点での展開を知っていないと駄目だ。 複数回読むこと推奨。