櫻史まさに公にせられむとす
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「櫻史まさに公にせられむとす。時正に櫻花爛漫たり。」
国文学の泰斗かつ桜花党の一人・山田孝雄博士の桜賛歌というべき
本書の書き出しである。昭和十六年刊行。
本書は上古より近代に至る桜を詠った和歌や詩、桜を愛でた文章、
桜にまつわる有名な話、桜の名所、桜で有名な人物など、日本人が
古来愛して已まない桜に関する歴史を高雅で馥郁たる文語文で綴っ
たもの。
古来、花と言えば桜、桜と言えば花を指すことは知られているが、
その考証からから始まり、上古、中古,近古、中世、近世、現代に
至る桜の諸相が豊富な引用文(現代語訳付き)を参照しつつ説明さ
れている。
最後に桜花がいかなる点において日本精神の象徴であるかが俗説を
廃して説かれている。俗説とは潔く散ることが武士道に合致してい
るとか、散り際に生の無常迅速を観じる、などである。博士に言わ
せれば、日本精神を桜に比するのは、ただただ桜の麗しさをもって
比するのであるという。