『Elvis: Aloha from Hawaii』の2枚組デラックス・エディションと足並みをそろえて、『Elvis: '68 Comeback Special』の3枚組デラックス・エディションが登場。こちらも貴重な映像の宝庫だ。“キング”ことエルヴィス・プレスリーの絶頂期のドキュメントであると同時に、TV放送された音楽パフォーマンスのマイルストーンである。本作が収録・放送されたのは1968年。それまでのエルヴィスは、コンサート活動から離れて映画出演に力を入れていたようだ。この『Elvis: '68 Comeback Special』は親密な雰囲気が際立つショーとなった。エルヴィスはおなじみの曲を次々に歌う。小さなステージに立ち、多くの場合ひとりきりで、夢中で聴き入るオーディエンスに四方を囲まれている。ショウの内容は3つの大まかなカテゴリーに分類できそうだ。まず、エルヴィスがステージ上でソロ・パフォーマンスを繰り広げる“ブラック・レザー・スタンドアップ・ショウ”。次に、エルヴィスが元バンドメイトのスコッティ・ムーアやD.J.フォンタナらとジャム・セッションを展開する“ブラック・レザー・シットダウン・ショウ”。そして、大掛かりなプロダククション・ナンバーの数々（ただし、1960年代のバラエティー・ショウの常として、現在ではやり過ぎで大時代的と映る部分も多い）。
   さて、TV特番がノーカット全長版（売春宿をテーマにしたナンバーがあるが、当時のテレビには過激すぎたかも）で収められているだけではない。このDVDでは、オリジナル・バージョンの“スタンドアップ・ショウ”全2部、同じくオリジナル・バージョンの“シットダウン・ショウ”全2部、プロダクション・ナンバーのさまざまなテイクを楽しめる。なお、“スタンドアップ・ショウ”全2部については、おおむね同じ内容が『One Night with You』としてリリース中だ。上記のうち、プロダクション・ナンバーについてはミスや乱れが多く、繰り返し楽しむにはつらいものがある。しかし、完全なかたちの“スタンドアップ・ショウ”および“シットダウン・ショウ”は、73分間のTV特番に飽き足らない向きにとって宝物のような価値がある。最初のテレビ放送から数十年を経て、エルヴィスが再びカムバックを果たしてくれた。（David Horiuchi, Amazon.com）