短い文章ほど難しい
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本書は、二月二十九日を含めた、366篇の文章。一つの文が、200字弱。新聞に連載されたものだそうだ。欲一年分も毎日書けたものだと、感服する。女性のスカートの丈とスピーチは短いほどよいという言葉があるが、短いスピーチは、難しい。文章もまた同じ。練りに練らねば、それなりの文章は出ないはずであるから。
著者の興膳宏氏は、専門の中国文学の世界を駆使して、漢語にまつわる話をたったの二百字で書いて、へえーと思わせてくれる。ちなみに、本日の九月十二日は、
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「眼花」は、眼がかすみ視力が衰えたこと。老眼は中国語で「花眼」という。白居易の六十歳ごろの詩「落花」は行く春を惜しむが、その結びにいう。「桃は飄りて火のごとくエンエンたり、梨は、堕ちて雪のごとく漠漠たり。独り眼花を病む有りて、春風も吹き落とさず」。桃の花は風に吹かれて火のように輝き、梨の花は雪のように一面に散り敷く。ただ私の眼の「花」だけは、春風も飛ばしてはくれない。老いの嘆息。
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へえーと思わずにはおれない。付録の「作者書名紹介兼索引」によれば、引用の最も多いのは、『詩経』、杜甫、白居易。中国文学の入門書にもなるのでは。
暇なときに拾い読み
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一日一語、その日にちなんだ漢語が記してある。
1ページずつめくりながら,見てゆくのもよいだろうが,私のおすすめは拾い読み。
妻の誕生日,子供の誕生日,祖父母の誕生日,恋人の誕生日。
どの日にも,ふうんと納得する漢語と由来が記してある。
たとえば,5月31日には「虚室」不勉強な私は初めて見る漢語である。
新緑の五月,陶淵明は「田園の居」に帰った。
そこにあったのはがらんとしてたっぷりのゆとりがある「虚室」
何も無い心にはいろんなものを入れる余裕があるのである。
上記のようなことが、もちろん私の上記文章より、遥かに格調高く分かりやすく記されている
ちなみに「団子」がちゃんとした漢語であることをこの本で初めて知った。