即興詩人とするイタリア紀行
★★★★★
筋書きは、主人公アントニオの生い立ちから流離、悲恋を経て即興詩人として成功し、美しい妻を娶る、という平凡なラブストーリーであって、それ自体、面白くも何ともない。しかし、リズム感に満ちた言葉に導かれて読み進むと、19世紀半ばのイタリアの土地々々を実に印象深くたどることになる。アントニオとするイタリア旅行というわけ。ローマ、アッピア街道、ナポリ、ベネチア、ミラノなどを含むので、現代と比較するのも面白い。ゲーテの「イタリア紀行」は、18世紀の中後半であるので、これをも含めて、3世紀にまたがる比較をしつつ読むのも一興かも知れない。安野光雅さんは「繪本 即興詩人」で現代との比較をしつつ現地を訪れている。