岩波新書で出ている『新しい文学のために』より、
もう少し噛み砕いた内容に思えて、取っ付きやすいものがありました。
非常に複雑な問題と向き合っているように思っていたのですが、
そのベースは実はシンプルで、
自身の疑問や発見を深く掘り下げ、見出すこと。
氏にとってはフィクションを書き上げていくことが
その思考過程となっているようだ。
その思考過程は他の人(職人)ならばまた違ったものになるだろう。
小説家としての職業人的態度というよりも、
魂の落ち着く先を切実に求め、世界と向き合う態度を
私としては面白く読んだ。
信仰する宗教が無いものにとって、
自身の価値基準や人生の物語を築き上げるのは
急務であり長いスパンにおける課題である。
このような課題について文学が担う役割は
やはり大きいと認めざるを得なくなった。
「なぜ自分が書かねばならないのか」に思い悩んでいる人に対して、著者は優しく反問する。
「すでに小説はバルザックやドストエフスキーといった偉大な作家によって豊かに書かれているのに、なぜ自分が書くのか?同じように生真面目に思い悩んでいる若者がいま私に問いかけるとしよう。私は、こう反問して、かれを励まそうとするのではないかと思う。すでに数えきれないほど偉大な人間が生きたのに、なおきみは生きようとするではないか?」(85頁)
恐らく著者もまた、若い自分にこう問い返し続けてきたに違いない。
「なぜ自分が書かねばならないのか」に思い悩んでいる人に対して、著者は優しく反問する。
「すでに小説はバルザックやドストエフスキーといった偉大な作家によって豊かに書かれているのに、なぜ自分が書くのか?同じように生真面目に思い悩んでいる若者がいま私に問いかけるとしよう。私は、こう反問して、かれを励まそうとするのではないかと思う。すでに数えきれないほど偉大な人間が生きたのに、なおきみは生きようとするではないか?」(85頁)
恐らく著者もまた、若い時自分にこう問い返し続けてきたに違いない。